2014.07.12 狂信的スバリスト レヴォーグに乗る A

そんな訳で、1か月はあっという間だった。

 私はようやく薄暗い整備工場で整備に勤しんでいるか、PCの前に居座り続けなればならないか、あっちこっちを ビストロ スポーツ で飛び回っているか、という生活から解放された。

 2014年7月12日、朝から曇りがちで、時々路面を濡らすほどの雨が落ちてくるような不安定な空模様だった。

 旅に出る時の朝は大体こんなもんだ。スバル なら天候が変化しても余計な気遣いをしなくてもいい。レヴォーグ が厳しい天候・路面条件でこそ一層輝く クルマ であることは、スバリスト にとっては 「当然」 である。これまでの レガシィ ツーリングワゴン の系譜を考えてみればいい。そこが、すぐにだらしなく顎を出す他のメーカーのクルマとは違うところなのだ。

 レヴォーグ の実力を知るには、むしろ お誂え向き の天気だ。

 福岡・百道の福岡タワー特設会場の駐車場は、九州各県からのクルマでごった返していた。駐車場で目についたのが、「レガシィからの代替が多い」と販売現場の人間が語っていた 某ドイツメーカー 2社 のクルマで、ひとりに話を聞いてみると、「こまごまとした部品がいちいち高くて、結構ランニングコストが嵩むんですよね。輸入車 だからしょうがないのかも知れないですけど。」と話していた。

 それは私も分かる。実際所有してみないと、こればかりは分からないことだからねぇ。

会場の隣のビルの駐車場には、なんと サンバー バン が9台、きちんと整列して停められていた。

 一瞬、「これを見せたいがためにこの場所を選んだのか?」と勘繰ってしまった。無論、そんな訳はない。今日は レヴォーグ の晴れ舞台なのだから。

 しかし、これだけ サンバー が並ぶと壮観だ。サンバー は 「繁栄を招く」 クルマだ。きっとこの会社は、これからもどんどん繁栄していくに違いない。

サンバー編隊の図
lEVORG DRIVING EXPERIENCE 福岡(1)

会場には、2台の レヴォーグ が置かれていた。

 クリスタルホワイト・パール の 2.0GT EyeSight の 本革アイボリー内装 と、アイスシルバー・メタリック の 1.6 GT EyeSight で、1.6、2.0とも、GT EyeSight の本革内装のみ、このアイボリーのトリムカラーが選択できる。

 本革シート はもちろん シートヒーター付 だから、寒い季節には、これがとてもありがたい。

 革の風合いは、ステアリングホイールと同じく、さらりとした好感の持てるもので、サポートや体圧分布も申し分ない。固くもなく、かといって柔らか過ぎず、夏でもベトつくことなく快適な肌合いだ。

 その隣には、BRZ の STIパフォーマンスパッケージ装着車 が展示されていた。

 一目で人々の視線を奪う 「カッコよさ」 は相変わらず 「さすが」 だが、よく見てみると、アンテナがマイクロポールで、シャークフィンとなったマイナーチェンジ後のモデルではない。

 とはいえ、マイナーチェンジは、クロスメンバーとボディ結合用ボルトのフランジを広くしたことと、先述のアンテナ程度で、他は小変更に留まっている。

 サンデーメカニックがやれる作業ではないけれど、従来型のユーザーでもその 「効果」 は間違いなくすぐに体感できるものなので、もし機会があれば、新型とぜひ乗り比べてみて欲しいと思う。

lEVORG DRIVING EXPERIENCE 福岡(2)
lEVORG DRIVING EXPERIENCE 福岡(3)

会場には、パイロンを並べたスラロームで、1.6 と 2.0 を乗り比べることができるコースと、EyeSight のプリクラッシュブレーキ を体験できるコースが 2レーン 用意されていた。

 どちらも大盛況で、特に EyeSight のプリクラッシュブレーキ体験コース は、気温も高く、しかも時折雨が降ってコースが濡れるという悪条件の中、入れ代替わり立ち替わり、ひっきりなしに 40km/h でダミーバリア に突っ込んでいたが、スタッフによれば、この2か月目に突入した全国を回るイベントで、一度も EyeSight が動作不良に陥ったことはないという。

 テントで暑さを凌ぎながら、この プリクラッシュブレーキ体験 の様子を1時間ばかりじっと眺めていたが、それは凄絶な光景である。あれがもしダミーバリアではなく、人 あるいは 自転車 だったら、と想像してみて欲しい。その一回一回の プリクラッシュブレーキ体験 は, まさに 「決定的瞬間」 そのものなのである。

  ちょっと他のメーカーでは、こんなことはやりたくてもできないだろう。

 言い替えれば、これが、何十年も歳月をかけて磨き抜いてきた 「本物」と、一朝一夕でできる 「贋物」 との違いだ。

 航空機 では、何万時間というフライトのうちの、わずか 1秒 のシステムの動作不良が悲劇的な結末を招く。それは 航空機 が 「空を飛ぶもの」 で、一度コントロールする術を失えば、地上に激突するしかない運命にあるからだ。

 だから、構造はシンプルに、何重にもフェイルセイフの機能を張り巡らす。さらに動作不良の可能性があるものは、何千万時間にもわたって動作確認をして、徹底的に作動不良の可能性を排除する。

 EyeSight ばかりではない。FF にしろ、シンメトリカルAWD にしろ、富士重工業 の送り出す クルマ たちの根底に流れている 「技術的血統」 は、いうまでもなく、中島飛行機 を前身とする、航空機製造 の経験に深く根ざしたものなのである。


前ページへ前ページへ2009.5.20 新型BR・BMレガシィ誕生!TOPへ次ページへ次ページへ