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STI 1/43 スバル レガシィ ツーリングワゴン STI

スバル テクニカ インターナショナル 1/43  スバル レガシィ ツーリングワゴン STI(1)

今回は、スバル テクニカ インターナショナル 1/43 スバル レガシィ ツーリングワゴン STI を紹介。

 STI が送り出してきた コンプリートカー として記念すべき 「第一作」 である。

 WRC では、参戦から 3シーズン目 を迎え、ようやく熟成が進んで 「グラベル最速マシン」 という評価を固めつつあった レガシィRS と、アリ・バタネン、コリン・マクレー という、「スペクタクルな」コンビ、デビッド・リチャーズ、デビッド・ラップワース、久世隆一郎氏 をはじめとした チーム の面々の表情にも、少しだけ、笑顔とゆとりが感じられるようになった頃の一台だ。

 当時の私は、BC5 を壊しに壊して、文字通り 「素寒貧」 だったから、潜ったクルマの下から、「みなさんお願いですから買って下さい。」と 「祈るような気持ち」 で販売の動向を気にしていたよう思う。

1992年7月発行 レガシィ ツーリングワゴンSTI

念のためお断りしておくが、私は 富士重工業 や STI の関係者ではありません(笑)。

 当時の レガシィ ツーリングワゴン は、すでに絶対的なブランドに成長していて、その 「限定車」 なのだから、貧乏な 狂信的スバリスト が心配することなど何もなかった。確か、2週間前後、で完売してしまったように記憶している。

 その年の秋から冬にかけて、鼻水をすすりながら サンバートラック を転がして部品センターに注文していた部品を取りに行くときに、すぐそばにあったモータープールに時々入ってくる、ダークレッドマイカとダークグリーンマイカのツーリングワゴンSTI を指をくわえて、羨望の眼差しで眺めていたものだ。

 ただ、不思議なことに、ライトシルバーメタリック の個体だけは見た記憶がないのだが。

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一言で言えば 「ドレッシィ」。純正の 15インチ BBSホイール は、GT-S2 と D型 RS に標準装備だったもので、なぜか 「STI」 の刻印が入っているのだが、これがあるだけで、ラリーサスペンションのせいで腰高で、マッドフラップにごついアンダーガードで 「武装」 した、自分の レガシィRSタイプR と同じ名前のクルマだと到底信じられないほど、「セレブ」 で、はるかに 「文化的な」 乗り物に見えた。

 私はこの時代の 4ポジション の E-4AT に乗ると、「ATに乗る意味がない」 と他人が呆れるほど、1・2・3・D を律儀にマニュアルシフトする 「変人」 だった。それは、この時代の AT が、変速レスポンスも緩慢で、ロックアップも緩くてスリップが多く、変速ショックも大きく、リニアリティがないことが耐えられなかったからだ。

 当時、どこかへの移動の 「運転手」 として、この ツーリングワゴンSTI のステアリングを握ったとき、そういう痛痒をあまり感じずに済んだことがとても印象的だった。専用の TCU のセットアップで、アクセルオンに対して変速スケジュールもアクティブだったし、なにより峠道で、アクセルオフで、緩慢でも過敏でもなく、気持ちよく適度にリバースしてくれることが楽しかったし、長距離のドライブのストレスを軽減してくれた。

 断っておくが、この時、4人乗車で、その4人分の 4 〜 5日 の旅行の荷物をラゲッジに積んで、である。

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そのずっと後、極上の ツーリングワゴンSTI が私の許にやってきた。だが、どういう訳か書類がないという 「曰く付き」の一台だった。書類がなければ登録はできない。だから、念のため、盗難の被害などの届けが出ていないかを1ヶ月掛けて徹底的に調べた上で、当時私の手許にあった BF5型 レガシィ ツーリングワゴンGT D型にすべてのコンポーネントを移植したこともあった。

 これは 「貧乏プライベーター」 にとって、言葉でいうほど簡単な話ではなかった。第一、自分でエンジンを載せ替えるなど、当時はまだやったことがなかったし、最後までやり遂げる自信などなかった。ただ、どうしても 「生かしてやらなければならない」 という、「義務感」 に近い、気持ちを抑えることができなかったのだ。

 当時借りていた借家の大家に散々文句は言われ続けたが(笑)、とてもいい経験になった。GT と STI の違い、つまり、STIチューン の 「キモ」 は専用の ECU と TCU だけだったから、メカニズムに限って言えば何もなかったので、今考えれば、何もコンポーネント全てを移植する必要はなかったのだが、自分なりに、丁寧に仕事を仕上げることができたという意味で、貴重な 「財産」 になっている。

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モデルについて。

 この レガシィ ツーリングワゴンSTI のベースとなっているのは、GT-S2 で、エクステリアでの変更点は、フロントバンパーのアンダースポイラーが専用品になることだけである。

 一応、フロントグリルも専用補修部品として部品番号はあるが、これは当時の 「ブライトン220」 のフロントグリルにチェリーレッドのアクセントを入れたものに過ぎなかった。リヤゲートにも STI のバッジがあるけれど、これも当時はSTIのグッズとして売っていたように記憶している。

 このルーフサイドの大きな STI のステッカーは、出荷の段階では車両に貼付されておらず、付属品としてオーナーに手渡されていた。私が手にした ツーリングワゴンSTI にも貼られていなかった。こうしたディティールはきちんと再現されている。

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この 15インチ BBSアルミホイール も、大切なディティールだろう。

 BF型 レガシィ ツーリングワゴンGT のホイールといえば、A、B型 が、RS と共通の 6スポークアルミホイールのシルバー塗装仕上、C型 が専用ディッシュタイプとなって、D型 で再び 6スポークホイール に回帰(ハブ、スポーク部がシルバー塗装仕上、リム部がポリッシュ仕上) という変遷を辿った。

この BBS製 15インチアルミホイール は、では、1992年 6月 のマイナーチェンジで、BC/BF型レガシィ が D型に移行した際に展開された GT-S2 の専用装備なのだが、面白いことに最初は 4ドアセダン にしか、この GT-S2 は設定されなかった。その 8月 に、200台限定 で この ツーリングワゴンSTI が発売されて、10月から、ツーリングワゴンにも GT-S2 が設定されるというタイムスケジュールだった。

 だから BF型ツーリングワゴン では、ツーリングワゴンSTI の方が、GT-S2 より BBS製ホイール を先に履いてデビューしていた、ということになる。

 1991年 6月 C型 に移行した時には、レガシィはすでに、いわゆる 「ワゴンブーム」 を巻き起こしていて、「指名買い」 に近い状況だったから、新たにこの BBS製ホイール を装着して、よりドレッシィに装った エクステリア と、シートがエクセーヌ張りにグレードアップした GT-S2 の標準の GT との価格差 約30万円 は、「他人と違うレガシィを」 という人にとっては、むしろ相当リーズナブルに感じたんじゃないかと思う。

室内の再現性も上々だ。

 前期より濃いブラウンのトリムカラーもよく再現されているのだが、なぜかシートが黒の 本革仕様 になっている。

 もちろん、ツーリングワゴンSTI にも、GT-S2 にも、本革仕様 は設定そのものがなかったから、GT の 本革仕様 と同じ内装を、本当は STI としては設定したかったということなのだろうか?

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この STI ミニチュアカーシリーズ は、台座がプラスチックではなく、圧縮材を使っているので、レジン製のミニチュアカーと併せると、結構な重量感があって、台座自体の控えめな光沢も高級感がある。それにきちんとシリアルナンバーが刻まれたプレートが付属するのも、実車と縁のあった人間にとっては嬉しいものだ。

 でも、やっぱり一番嬉しいのは、ダークレッドマイカの深みと光沢感が見事に蘇っていることかもしれない。とにかく平面の研ぎ出しと塗装のフィニッシュについては、とてもこだわりを持っているようだ。これだけでも スバリスト にとっては 「買い」 だといえる。

 全体のプロポーションは、ややエンジンフードのスラントを強調しすぎの感があるが、ハセガワ の 1/24 を除けば、唯一の BF型レガシィ ツーリングワゴン のミニチュアカーだけに貴重な存在だ。

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裏板はまったく再現されていない。許します。STI の送り出したモデルだから(笑)。

 少量生産品の場合、ここまでやると、ホントに元手を取るのが難しくなってくる。不満がある人は、自分で一からミニチュアカーを作ってみるといい。

 私は何度もやってきたが、いつも 「足」 が出そうになる。ミニチュアカーでそれなりの収益を上げるには、それなりの販売量が確保できないと絶対に不可能である。

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そういう意味でも、この STI のミニチュアカーシリーズは、スバリスト なら、多分、1台 や 2台、個人的な思い入れが語れるクルマがあるはずだ。だから、ぜひ、そういうクルマだけでも手にして欲しいと思うのである。

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