アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー トラック WRブルー リミテッド

アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー  トラック WRブルー リミテッド(1)
アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー トラック WRブルー リミテッド

2012年3月29日、富士重工業 群馬製作所を最後のサンバーがラインオフして、富士重工業の軽自動車生産は名実ともに幕を閉じた。

 グローバル化する経済の中で、スケールメリットが大きくモノを言う時代。日本国内でしか売ることができない 甚だ 「ドメスティック」 で、作り手の 「こだわり」 や 「良心」 より、付けられたプライスタグの金額がすべて、といってもいい 「軽自動車」 という商品に、世界シェア 1% 未満の、小規模なマスプロダクツメーカーが新規開発費用を捻出することは難しい時代である。

 「だから軽なんて早くやめちまえば良かったんだ」 などと知ったような口を聞くような人間に スバリスト としての資格はないから、この HP に来る必要もない。

 とっとと出てってくれ。

 1台のクルマを作るということは、車体価格が レガシィ などと比べて 半額以下 の 軽自動車 であっても、開発費まで 「半額」 になる訳はない。おそらくほとんど変わらないだろう。

 だから、もともと 「上がり」 が少ないのに、まず 白物家電並みの激烈な 価格競争 に晒され、他メーカー と比べて不利な 販売店舗数 のために 販売台数 を稼ぐことも叶わず、凝ったメカニズムや良心的なパッケージングを訴えても、買い手 も そもそも クルマ としての完成度など求めていない 「軽自動車」 という 「報われない」 マーケット。

 そうした市場で、富士重工業 がどうしてここまで 「軽自動車の自社開発」 という「流行らない真似」 を続けてきたのか、私は 貧乏である という消極的 (・・・) 理由はともかく、その意味を知りたくて 最近、改めて ヴィヴィオ に乗り始めた。

 私は クルマ は バラしてみなければ分からないと思っている。

 そういう意味では、子供の頃から 歴代の スバル を解体屋 に入り浸って バラすことが何より楽しかったという、よく他人から後ろ指を差されて笑われた 「奇癖」 のおかげで、メカニズムの変遷 を鳥瞰し、そこに込められた 富士重工業 の 技術者 たちの 「思い」 を感じ取ることができるのは、私にとって、この上もなく 「幸せ」 なことである。

 ところで、レガシィ が 現行の BM/BR型 に切り替わってから、WEB上 には 「富士重工業 が トヨタ の部品共用による コストダウン にご執心で、クルマ作り に手を抜いている」 という、まことしやかな 「風説」 を流す奴がいる。

 で、その理由を見てみると 「デンソー製の部品を使っているから」 なのだそうだ(笑)。

 こうした連中のことを 「阿呆(あほう)」 という。

 日本電装(現:デンソー)の名前は、スバル360 の時代から、スバリスト にとって 歴代スバル のパーツリストではおなじみのものだし、トヨタ、あるいは デンソー 製の部品を持ってきたからといって、いきなりコストダウンが実現するほど クルマ は甘いものではない。

 クルマ に使われる部品のひとつひとつには、必要とされる性能、サイズ、形状などの要件が設計段階から決められていく。そうしたひとつひとつのパーツの要件を、現在ライン生産中の他社のクルマに使われているパーツと合わせていくということは、考えるだに恐ろしく手間の掛かる膨大な作業だし、他社の新型車開発のスケジュールにまで踏み込まなければ不可能な話だ。パーツだって事ある毎に変更が加えられていくのである。デンソー など パーツサプライヤー の生産体制、それらの部品をアッセンブリーする工場までのロジスティクスコストだって無視できない。

 一方、現行の BM/BR型レガシィ を バラしてみても、トヨタ との部品の共用化が進んだとは全然思えない。

 私ごときがいうまでもなく、スターターやオルタネーターなど クルマ の性能や性格には関係のない機能部品については、トヨタのスケールメリットのシナジーが期待できるのであれば、どんどん使っていくべきだと思う。それは、今回、 86/BRZ の共同開発で、開発部門同士の 「摺り合わせ」 を行ったことで、これから少しずつ進んでいくに違いない。

 メディア や 評論家 のいう デタラメ を バカ のひとつ覚えで吹聴して回るのもいいが、少しは自分の手と目を使って、確認してからモノは言わないと、赤っ恥をかくだけならまだしも、結局、物事の本質を見失って、「誰か」 に踊らされることになるだけだと私は思うね。

閑話休題。

 1958年3月3日、太平洋戦争の敗戦という、未曾有の国難からようやく立ち直りつつあった日本の一般庶民にも、自動車を手の届くものとし、なおかつ、軽自動車であっても大人4人が快適に移動できるという目標を掲げ、そしてその目標を見事にすべて達成して、スバル360 はこの世に生を受けた。

 その開発ストーリー と 変遷については、富士重工業 自身 による、スバル360に関する記録、「The mini History of SUBARU360 〜スバルの歴史〜 」で、つぶさに知ることができる。

昭和36年5月発行 スバル360 61年前期型 カタログ

中島飛行機を前身とする技術者たちの、血の滲むような軽量化の努力と、既存部品に固執することなく、必要な機能を備えた最適なサイズのメカニカル・コンポーネントをひとつひとつ新規に開発し、合理的・機能的に無駄なく組み合わせていくという、言葉で言えば簡単だが、しかし気の遠くなるような試行錯誤の末に誕生した スバル360 は、「足し算のエンジニアリング」の末に、2トンにもなろうかという車重を省みることもなく 「エコ」 という言葉を振りかざす、現代の他のメーカーのクルマとメディアの 「厚顔無恥さ」 に対し、いつでも自動車のエンジニアリングについての 「真実」 と 「本質」 を問いかけ、光り輝き、色あせることはない。

 戻るべき 「場所」 があるということは、富士重工業 にとって絶対的な 「強み」 であり、この上なく幸せなことである。

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昭和36年1月発行 サンバー カタログ

ところで、サンバーのデビューは1961年2月。スバル360 のパワートレイン / ドライブトレインを、堅牢なはしご型フレームに搭載。

 高級車でさえリーフスプリングにリジットアクスルが常識だった時代に、軽自動車、それも商用車にして、前後 トレーリングアーム、スイングアクスルとはいえ、フローティングのドライブシャフトを備えた四輪独立懸架を与えてしまうところも 富士重工業 の面目躍如 。

このふたつの特徴は1961年の誕生から、2012年3月の終焉まで、サンバーのアイコンとして引き継がれていった。

画期的だったのは、フルキャブオーバーのキャビンにすることで、長大な荷台を確保することに成功したこと。

 「トラック が キャブオーバー なのは当たり前じゃん」 などと言ってはいけない。当時は トラック にしろ バス にしろ、ちゃんと 「ボンネット」 というものがまだ存在していて、その分、荷台や客室スペースを犠牲にするのが 「当たり前」 だったのだから。

 物事には何事にも 「はじまり」 というものがあって、サンバーは キャブオーバー型 商用車の 「はじまり」 なのである。

サンバー と ボンネット トラックの 荷台比較

「キャブオーバー」という 「言葉」 を聞かされると、ムズムズしてくる スバリスト は多いはずだ。なにしろ、戦後間もない昭和24年8月、富士重工業 伊勢崎製作所で、日本初のフレームレスのリヤエンジン・キャブオーバーバス 「ふじ号」 が製作されていて、当時の 伊勢崎製作所 に在籍して、この 「ふじ号」 の設計に携わったのが、百瀬晋六氏 その人なのだ。

 確かにサンバーはモノコックボディではないが、そうした当時の 富士重工業 技術陣の合理性、機能性に対する考え方に触れれば、いかにも 富士重工業 の製品らしい 「スピリッツ」 に貫かれていることをお分かり頂けるだろう。

アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー  トラック WRブルー リミテッド リヤ
アガツマ サンバー WRブルーリミテッド 左サイドビューアガツマ サンバー WRブルーリミテッド 右サイドビュー
2010年3月3日 西日本新聞 広告

富士重工業 が、軽自動車の生産から撤退する、と正式に発表したのは、2008年4月10日。

 スバリストとしては、「これでついに スバル の作った軽自動車を選べなくなるんだな」 という一抹の「寂しさ」 と同時に、エントリーモデルとしての軽自動車は、引き続き ダイハツ からの OEM で用意される訳で、これで限られた 経営資源 と 開発リソース を登録車に集中していけるのであれば、それはそれで良い事だ、と思った。

 それから2年後の、2010年3月3日付けの地方紙に載った広告を見て、私は衝撃を受け、頬を涙が伝わり落ちるのを感じた。

 3月3日・・・。

 富士重工業 が 「この日」 を選んだのは 「偶然」 ではあり得ない。

 紙面 1/4 を使った、この地味な広告に 富士重工業 が込めた想いは、言葉ではとても言い尽くせないものだったに違いない。

 この広告を見た人の中で、その 富士重工業 の込めた 「想い」 に、気付いた人が、果たして何人いただろうか ----- 「軽自動車」 というカテゴリーは、富士重工業 ばかりでなく、スバリスト にとっても 「特別なもの」 だったのだと、改めて気付かされた次第だ。

その 1年後 の 2011年3月13日、ステラ の 生産終了 がオフィシャルWEBサイトで告げられ、いよいよ 富士重工業 の 軽自動車生産 の 「トリ」 を務める役割が サンバー となることが決まった。

 流行に媚びず、ひたすら自らの仕事を脇目も振らずに全うする 「職人」 のような役割を演じ続けてきた サンバー が 地味に、ひっそりと 富士重工業 最後の軽自動車生産に幕を引くのも悪くないな と妙にしんみり考えたことを覚えているが、その 4ヵ月後 、その 「職人」 にきらびやかな WRブルーマイカ を纏わせるのだ!と聞いて、私は手を叩いて喜び、そして心から笑った。

 これには私もあやうく再び 「殺されかけた」が(金があったら間違いなく買っていた)、私の周辺で 見事に 「殺されてしまった」 人が3人ばかりいる(笑)。

 こちらでは、結局この カタログ は店頭には並ばなかった。スバルの場合、即日完売御礼となるのは、インプレッサ や レガシィ の STI ばかりではないのだ。

2011年7月発行 サンバー トラック WRブルー リミテッド カタログ
アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー  トラック WRブルー リミテッド 台座固定状態

ところが今回は サンバー の WRブルー 化ばかりか、もうひとつ 「オチ」 が用意されていた。

 今回、私のように 「欲しかったけど買えなかった」 気の毒な スバリスト に対する 「救済策」 (?)として、さらに 1000台、サンバー WRブルーリミテッド は 「増産」 された訳である(笑)。

 これは買わない訳にはいかないね。

アガツマ ダイヤペット DK-5115 スバル サンバー 幌付きトラック

ダイヤペット は、かつての 米沢玩具 から 紆余曲折 を経て、いつの間にか商標が アガツマ なるメーカーへと移っている。激しいグローバル競争の波に晒されているのは、実車の世界ばかりではなく、ミニチュアカーの世界でも同じである。

 今回の サンバー トラック WRブルー リミテッド の前に、ダイヤペット は、左の 「スバル サンバー 幌付きトラック」 を発売していて、まあ、これが何の因果か、富士重工業の 「最後の」軽自動車となった サンバー の最終型に当たった。

ご覧の通り、とても雰囲気良く仕上がっていて、スバリスト なら、メモリアルとして 1個 持っておいて損はない逸品だ。

 「じゃあ、標準品の幌付きトラック買っとけば OK でしょ?」と思うかも知れない。

 ところがそうではないのである。

 今回の ダイヤペット の サンバー トラック WRブルー リミテッド は、まず 実車 と同じく 1000台限定 となっていて、その 1台1台に シリアルナンバー が刻まれる。

 ダイヤペット で 台座固定 のもの、というのがそもそも非常に珍しいのだが、その台座には、スバル の CI と 「SAMBAR Truck WR BLUE LIMITED」 という、カタログ表記と全く同じ字体のロゴ、そして シリアルナンバー をプリントされた、下のような シール が貼られる。

アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー  トラック WRブルー リミテッド  台座 シリアルナンバー

もうこれだけで、今回の サンバー トラック WRブルー リミテッド のモデル化が 富士重工業 公認、それもかなりの 「肝いり」 で企画されたものであることが明らかだ。まずそこが 「特別」 なのだ。

 さらに、台座から車両をはずして、シャシー裏を見てみると・・・

アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー  トラック WRブルー リミテッド シャシー

ご覧のように。フロントバンパー 下裏にも、シリアルナンバーが、おそらく 「レーザー彫刻」 だと思われるのだが、その隣にプリントされた 「/1000」 の文字列と、寸分の狂いもなく、美しく刻まれるのだ!

アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー  トラック WRブルー リミテッド シャシー シリアルナンバー部分 拡大写真

まあ、ちょっと考えてみて欲しい。

 マスプロダクツ製品の 「長所」 とは、「 大量生産 による 商品価格 の 安さ 」ということに尽きる。

 同じものを人手を掛けたり、機械による 「ライン生産」 とすることで、製造コストを抑え、必要な部品を大量に発注し、部品コストを抑えることで、低廉な価格を実現している。

 こうした マスプロダクト は、「同じものを大量に生産する」 ことを目的としているので、今回のダイヤペット のサンバー トラック WRブルー リミテッド のような、通常生産品 にない 工程 が入ってくると、ラインを見直すか、そのための新たなラインを作るか のどちらかを選ぶことになるだろう。

この サンバー トラック WRブルー リミテッド に限って言えば、色とパッケージの変更は通常のライン混流でも対応できるだろうが、台座固定、シール貼付、そして 面倒な シリアルナンバー の刻印 といった作業は、おそらく別ラインで行われたに違いない。

 無論、わずか 1000個 しか作らない 製品 のために、新たに必要な部品も確保しなければならなくなる。

 通常生産品の単なる 「色替え」 なら、もっと 「安く」 できたし、たくさん作ることもできた。

 だが、今回はあえて 実車 と同じ 1000個 に限定し、なおかつ銘板シール付きの台座を付けなければならなかったし、シリアルナンバー も刻まなければならなかった。

 そうしなければ 「ガマンができない」 人間がいたのである。

 それは一体 「誰」 か? ----- それは、サンバー に限りない愛情を抱いていて、その 「別れ」 に何らかの 「手向け」 を捧げない事には気が済まなかった 人々 である。

 そうした 「バックグラウンド」 が与えられた時、「モノ」 は 単なる「モノ」 ではなくなる。人々の記憶の中で、永遠に色褪せることなく、激しく、眩い光を放ち続ける 「星」 になるのだ。

アガツマ ダイヤペット 1/36 スバル サンバー  トラック WRブルー リミテッド パッケージ

作り手が モノ に込める 「魂」 がなければ、それはただの 「モノ」 だ。代用品は他にいくらでもある。

 クルマ だって同じである。多くの日本の消費者は、スバル の軽自動車 は他のメーカーの 「軽」 と同じだと考えた。

 無論、それは違う。スバル の 軽 は スバル にしか作れない。

 よくメディア は、日本の消費者について 「賢く確かなモノを選ぶ目を持った ---- 」 という。

 それは単なる 視聴者 への リップサービスだ。正しくは 「頭が悪い上にモノを見る目がない阿呆ども」 である。

 そうした連中 は、キレイな女優やカッコいいタレントが出る コマーシャル に自分を重ね合わせて、舶来モノの クルマ に乗る自分に人々から羨望の眼差しを向けられると信じて、この クルマ を買ったら手に入るであろうすばらしい人生を夢見て クルマ を選ぶのである。

 メカニズム? そんなの分からないし、面倒くさそうだし、手が汚れるし、疲れるからお金払って他人にやってもらってます。

 そんな連中に クルマ の本質なんて、そもそも理解できるのか?ムリムリ、死ぬまで ムリ だ。だから、スバル は軽自動車の自社開発をやめて、OEM に切り替えるのである。

 スバリストとしては、まさに 「断腸の思い」である。この ハラワタ が煮えくり返る 怒り を一体どこにぶつければいいのか ----- 。

 そんな勝手に一人で怒りに悶え狂っている スバリスト とは対照的に、サンバー の最後は、この WRブルーマイカ の抜けるような青空のように、清々しく爽やかだった。

 作り手の 「魂」 が込められた 「モノ」 ほど愛おしいものはない。富士重工業 は 「たかが軽トラック」 にこれだけの 「魂」 を込めていたのた。私は死ぬまでそのことを忘れない。

 サンバー、もう君に会えないのがとても言葉では言い尽くせないほど寂しいよ -----

 さよなら。そして、長い間本当にお疲れ様 ----- ありがとう。


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