アオシマ 1/24 スバル WRX STI 2010 スペックC WRブルーマイカ

アオシマ 1/24 スバル WRX STI 2010 スペックC WRブルーマイカ(1)

ついに GRB / GVB型 WRX STI が去り行く日が訪れた。

 歴代の WRX たちを見送ってきた時よりも、私はその 「別れ」 が名残惜しく感じられてならない。

 2007年、WRC における スバル の威信を担うべく登場しながら、1年も経ずに WRCチャレンジは終焉を迎えた。しかしその後も、己の存在意義を問い続けるかのようにトップカテゴリー以外のモータースポーツを戦い抜き、自らを厳しく磨き続け、そして新たな 「種子」 を残して去って行った、その 厳しさ、頑なさ ゆえである。

 WRX の存在意義は、1992年11月 に登場した GC8型インプレッサWRX の誕生の時からまったく不変だ。例えば、かつて GC8 でモータースポーツを楽しんだことのあるドライバーが、年を重ねて 「丸くなって」 乗っている 「いつものクルマ」 のステアリングから、WRX STI のステアリングに握り替えたとしよう。

 旋回の際のトラクション、タイヤが受け持つコーナーリングパワー、グリップ、そして限界付近でのアジリティなど、すべての面で歴代の WRX たちを凌ぐ。そして、ドライバーを中心に発生するヨーモーメントと自然な挙動、実に 8,500rpm を許容する、熟成極まる EJ20 のもたらす スバル ボクサー スポーツ でなければ絶対に味わえない、まさしく 「快楽」と呼ぶべき世界は、さらに研ぎ澄まされてそこにあるのだ。

 みんな魂を持ってかれるのである。

 ドライビングプレジャー は、0 〜 100km/h 何秒、0 〜 400m 何秒、といった、クルマに頼り切った走りでは決して得られない。

 コーナーが見えてきて、どこでブレーキを踏み、荷重を移し、ステアリングを切り込み、スロットルを調整しながらどうクリップを舐めていくか、常にそのことをイメージするアクティブなドライビングを心がけること。

 うまい、ヘタではない。それはあくまでも 自己満足、自己陶酔 の世界だ。しかし、「より速く走りたい」 という 「欲望」 は、人類誕生以来の根源的な欲求に違いない。

 最初は ヒール & トゥ の 「マネ事」 だっていい。その時 WRX STI は余裕をもってその操作に応えてくれるだろう。その 「操作」 が良かったのか、拙かったのかをきちんとドライバーに教えてくれるはずだ。

 かつて私が BC5 から多くを教えてもらったように。

 ただ、BC5 の時は、私のヘタな操作に BC5 が音を上げてしまうことがたびたびだったけどね(笑)。

 私は、GDB、GRB、GVB なら、ツイズティで路面状態があまり良くないステージであれば、世界中のスーパースポーツを向こうに回しても負けない自信がある。

 400万円以下で、そんな 「夢」 を叶えてくれる クルマ は、現在、世界で WRX STI だけだ。

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一方、そういう 「スピリット」 は不変でも、世界は絶え間なく動いている。

 石油価格の高騰や、CO2排出量、排気ガス規制、燃費基準、衝突安全基準といったクルマを取り巻く環境は、GC8 インプレッサWRX がこの世に生を受けた時代とは段違いに厳しくなった。

 今日び、単純に 「速くて楽しけりゃいいでしょ?」 と メーカー が スポーツモデル をポンと気軽に出せる時代ではない。ユーザーの意識の変化による、そうしたスポーツモデルのマーケットの縮小という現実もある。

 気が付けば、あれほど豊富だった国内メーカーのスポーツモデルはすでになく、グローバルな視点でも WRX STI ほどの動力性能を持った、400万円以下、4万ドル以内で買えるスポーツモデルは、そうした現実の前に、いつの間にか 「全滅」 していたといっていい。そこには、グローバルマーケットでの競争力と開発コストの低減のために、プラットフォーム、部品を共用化するという、メーカーの 「大人の事情」 がある。

 富士重工業 だって例外ではない。軽自動車生産を止めた今、そもそも、レガシィ、インプレッサ、フォレスター という基幹車種は、サイズもそう変わらず、機能もオーバーラップする部分が多い。スバル のラインナップからすれば、プラットフォームはひとつあれば事足りるはずである。

 それはこれまでだってそうだった。にも関わらず、車種同士で共用できる部品があまりないのも スバル の特徴で、「こだわり」というと聞こえがいいかも知れないが、実際はそのために余計なコストが嵩むばかりか、クルマの開発に携わるセクション、つまり 「人手」 も膨大に必要で、とはいえ、それぞれ 「違うモノ」 を作っている訳だから、セクション同士での 「人の融通」 も叶わず・・・という感じで、その 「シワ寄せ」 が大切な商品の最後の 「煮詰めの甘さ」 という部分に出てくることが多かった。

 「それでも スバル 」 と言ってもらえるのには理由がある。

 そもそも他メーカーが 直列四気筒FF というパッケージ を採用する理由は、自社内、あるいはパーツサプライヤーを通じた部品の共用化が容易で、部品の調達コストが安いからだ。

 別に性能面でメリットがあるからではない。考えてみたらいい。世界中の クルマ のカタログで、スペースユーティリティ以外で 直列エンジン横置きFF という メカニカルパッケージ の 運動性能における物理的優位性 を謳っているメーカーなんてどこにもない。

 それでも 直列4気筒エンジン横置き FF というパッケージング なら、荷重分布はともかく、多くの場合、エンジンから出た駆動トルクを 90° あるいはリダクションギヤを噛ませて 180°転換させるなどという 「愚かな」ことをせずに駆動輪に伝えることができるから、ひとまず動力伝達系のフリクションロスは最少で済む、という、自動車のエンジニアリングにおける 「最大公約数的妥協点」 であるに過ぎない。

 だが 直列4気筒エンジン横置き FF ベースの AWD では、トランスミッション 〜 トランスファー 〜 フロントデフ 〜 リヤドライブトレイン の動力伝達はどうしたって複雑にならざる得ない。フリクションロスは増える。その上、スバル ほど 他メーカー は AWD に血道を上げてはいられない。

 だから 水平対向エンジン を核とした スバル の「シンメトリカルAWD」 以上に 「バランス」 に優れた AWDシステム を作ることはできないのである。

 これは地球に 「物理」 というものが存在し続ける限り、金を握らされた 評論家 や メディア がどう書こうか変えられない 「真実」 だ。

 第一、シンメトリカルAWD のベースである、水平対向エンジン を搭載した スバルFF方式自体、直列エンジン横置きのFFより駆動輪、そして車両全体の荷重分布という点で全然優れている。

 この 「シンメトリカルAWD」 の始祖である スバルFF方式 を採用した最初のクルマ、スバル 1000 を開発した当時の 富士重工業 技術陣 には、前輪駆動 がいずれ近い将来、小型車の主流になることが分かっていた。エンジンとトランスミッションを一体でフロントに配置すれば、スペースユーティリティでも、構成部品点数を抑えられることによるコストの低減でも、動力を引き廻す経路の短さから得られる駆動系の振動・静粛性の面でも、広くて快適で静かでしかも安い、小型乗用車に相応しいパッケージングだと見抜いていたのだ。

 しかも駆動輪と操舵輪が一緒なら、操縦安定性、ひいては安全性の面でも有利だと考えていた。

 だが、スバル 1000 が登場するまで、FF車 の最大の 「アキレス腱」 だったのが、駆動輪と操舵輪を兼ねるフロントホイールを駆動するための ドライブシャフト だった。一般的な クロスジョイント では、転舵した際に大きな振動を発生し、すでに開発されていた等速ジョイントも、すべてトルクキャパシティ、耐久性に問題を抱え、多くのメーカーがFF車の開発を忌避する、FF車普及の最大の 「問題」だった。

  スバル 1000 でも、この フロントドライブシャフト の開発は難航し、その開発に成功したのは、東京モーターショー での 「お披露目」 を 1か月後 に控えた、昭和40年8月 という際どいタイミングだった。

 この伸縮可能な 「D.O.J = ダブル オフセット ジョイント」 をインボード側に、そしてすでに開発されていた 「C.V.J = コンスタント ベロシティ ジョイント」 をアウトボード側に配置する方式は、現在では世界中の FF車 の 「スタンダード」 だ。それを可能にしたのが、当時の 富士重工業 の 技術陣 だということも凄いことで、スバリスト としては大いに誇らしい限りだが、もちろん、スバル 1000 の場合、「それだけ」 では済まない。

 スバル 1000 の開発で重視されたのが 登坂性能 だった。当時の日本では、未舗装の上に急坂という条件は山間部に限らずどこにでもあったからだ。

 急坂登坂の際、クルマ の荷重はリヤに移り、フロントからは荷重が抜けてしまう。そうなると FF車 は簡単にトラクション不足に陥ってしまう。そのために FF車 は前輪に 60% の車重を掛けるのが一般的だが、それでも 直列エンジン横置き のパッケージングでは、エンジン自体の重心の高さのためにトラクションが不足する。

 ではどうするか。

 そこで、低重心の水平対向エンジンにした上で、トランスミッションをホイールベースの内側に取り込んで、前輪の荷重分布を均一にする。こうすれば クルマ は 坂に 「へばりつく」。

 急坂登坂ばかりではない。鼻先にエンジン・トランスミッションという重量物を集中して配置するのか、トランスミッションをホイールベースの内側に取り込むのかで、高速旋回時のヨー慣性モーメントの出方は全然違うし、日常的な走行でも、そういう慣性モーメントの問題だけでなく、ブレーキダイブ時の荷重変化は少ない。これは ABS や VDC といった安全デバイスがいくら進化したところで、そもそもの 「素質」 に差があるのだからどうにもならない。

 クルマの運動性能に与える影響は、車検証に記載されている 静的な前後軸重量配分 より、重量物を車体のどの位置にレイアウトしているのかという 荷重分布 の方がはるかに大きいのだ。

 ついでにいえば、スバル の FF はトルクステアが圧倒的に少ない。昔からそうだ。荷重分布が均一であるばかりでなく、左右等長のドライブシャフトで左右輪に均一に駆動トルクが伝えられるからだ。

 スバル 1000 から 現在の シンメトリカルAWD へ続くスバル のメカニカルパッケージは、こういう 「技術的必然」 から成り立っている。しかも、これは語るべき 「技術的必然」 のごく一部に過ぎない。つまり、どこまでいっても 「理尽くめ」 なのだ。どっかの ビジネスサイト で、「シンメトリカルAWD自体が価値を生む訳ではない。」 などと知ったようなことを書いている 両角 とかいう 阿呆 がいたが、と 〜 んでもない話である(笑)。

 そして AWD は、2WD に対し、走る、曲がる、止まる という自動車に求められるすべての基本性能で優れている。

 いうまでもなく、スバル を選ぶ人々は、昔からそういう スバル の 「フィロソフィ」 を理解して買っているのだ。

 小所帯なコンストラクターである 富士重工業 にとって、車種別にいくつもプラットフォームを開発するよりは、ひとつのプラットフォームの 「能力」 を、車種別にどの 「ベクトル」 へ伸ばしていくか、という考え方の方が効率的だ。ひとりで頭が真っ白になるまで考えるより、多くの人の経験やアイディアを募った方が、より早く、よりいいもの ができるに決まっている。セクション毎の人の行き来のフレキシビリティを高めることは、組織同士で刺激を与え合う副次的な効果もある。

 そういう意味で、特に GJ/GP型インプレッサ に初めて乗った時、スバル は、とてもいい方向に進んでいると私は思った。BM/BR型レガシィ がリリースされた折には、世界的に EV化 のドラスティックな変革が進むと思っていたが、ハイブリッド にしろ EV にしろ、ネックとなっているのは、肝心の電池の性能の向上の歩みが 「カタツムリ以上」 に遅いことだ。

 日本は狭い島国だけに特殊なのだろうが、グローバルな視点では、まだ EV はおろか ハイブリッド車 の普及すら全然進んでいない。「電池切れ」 の際の動力性能の低下が、それなりのペースで長い距離を走る人にとっては、まだ無視できないレベルだし、PHV、EV の普及の 「キモ」 であるインフラストラクチャーの整備など、まるで手付かずである。

 そういううわべの 「目新しさ」 よりも、「安全」 の問題はクルマにとって、より本質的な問題だ。

 例えば、燃費がいいクルマで、日々ガソリン代に使うお金をチャリンチャリンと貯金箱に貯めて行っても、ぶつかってしまえばそんな 「貯金」 は一発で吹っ飛んでしまうし、おそらく 「燃費が良ければ死んでもいい」 と考える人の数は、一般的に非常に少ないのではないかと思われるからである。

 アメリカ の IIHS (高速道路安全保険協会) では、2015年 から プリクラッシュセイフティシステム が付いていないクルマに、最上級の 「トップセイフティピック + 」 は与えられない。そして、残念なことに、コンパクトカーのスモールオーバーラップクラッシュテストの現状は、目を覆うばかりの 「惨状」 である。

 このテストで ワーストの判定を下された 某メーカー が反論している。

 「社内テストでは安全性が確保されていることを確認している。」

 あまり賢明とも意味があるとも思えない反論である。解体屋に 10年 通ってみたらいい。この IIHS が実施している スモールオーバーラップクラッシュテスト に該当するようなケースの事故は決して少なくはない。ちなみにテストされたのはハイブリッドではないタイプで、これでより車重の重いハイブリッドだったらどうなっていただろう。この某メーカー は、日本では販売していない 2014年モデル の ミドルクラスSUV でも Poor (不可) の評価を受けている。

 このひとつ下のカテゴリーには フォレスター がいる。評価はもちろん Good (優) だ。そもそも スバル には、2012年から始まった、この スモールオーバーラップ クラッシュテスト で、最上級 の Good (優) 、その下の Acceptable (可) より下の判定を下されたクルマは1台もない。コンパクトカーに比べればクラッシャブルゾーンにはずっと余裕が持てるレンジだ。能天気な反論に走る前に、メーカーは結果をもっと深刻に受け止めるべきではないか。

海の向こうではすでにリリースが始まった、GRB / GVB からバトンを渡された WRX が、このスモールオーバーラップテスト でしっかりと 「トップセイフティピック 」 を獲得した。

 乗員の生存空間の確保、身体障害の可能性、頭部加速度、エアバッグの作動など、すべての項目で素晴らしい成績を収めた。

 だが、プリクラッシュセイフティシステムがなければ 「トップセイフティピック + 」 はもらえない。

2015 Subaru WRX small overlap IIHS crash test
2015 Subaru WRX small overlap crash test

私は TY85型 トランスミッションは、世界でも5本の指に入るほど素晴らしいマニュアルトランスミッションだと思っているのだが、EyeSight との融合を考えれば、やはり 2ペダル への対応は不可欠だ。しかも完全なクラッチペダルレスの 2ペダル なら、あらゆる路面でもはや WRX STI の 2.0L級 世界最速の座を脅かすものはない。一方、マニュアルシフトの楽しさを好む人もいる。

 難しいところだ。

 だが、クラッチを完全に電子制御化して、ギヤを確実に同期させることが可能なら、もはや シンクロ はいらないかもしれない。ドグミッション化が可能なら、トランスミッション自体の軽量化や、各ギヤの歯幅を大きくすることで、さらなる高トルク化への対応が可能になる。それは、FA20型直噴ターボエンジン のレブリミットが、現在 6,500rpm で、もっと上まで回すことを仮定した際のポテンシャルを考えれば、決して無為ではないように思える。

 そういうシステムができたとしても、当座は高価なものに違いない。だがそれが量産効果でコストが下がり、より洗練され強靭なものになった時、ライバルは震撼するだろう。

 新しい WRX の向こうに、私はそんな夢を見ている。

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GRB / GVB の基本的なメカニカル・パッケージは BC5、GC8 からほとんど変わっていない。自動車を取り巻く環境変化の度毎にドラスティックな変更を加えられながら、結局生き残れなかったライバルたちとの違いは一体どこにあったのだろうか?

 しかしもちろん、同じ 「EJ20」 でも、GRB / GVB から BC5、GC8 に流用できる部品なんて何ひとつない。バラしてみたらいい。もうそれは 富士重工業 技術陣 の 「執念」 といっていい。

 クランクケース上面に鋳込まれた 「EJ20」 の文字を見るたびに私の胸は熱くなる。

 25年もの時の流れにも色褪せず、変わらないドライビングプレジャーを提供してくれる、この素晴らしいエンジンには、送り出した人々の 「魂」 が確かに宿っている。同じところに立ち止まっていたとしたら、生き残ることはできない。WRX STI が変わらないドライビング・プレジャーを味あわせてくれるのは、たゆみない 「進化」 を技術者たちが EJ20 に施してきてくれたからこそなのだ。

 スポーツモデルの開発には、手間が掛かるし、専用部品が必要だからコストも嵩む。苦労して作っても販売台数は見込めない。だから300万円以下、3万ドル以内の FRスポーツ のマーケットは 「ニッチ」 になってしまった。グローバルマーケットでそれなりのマーケットシェアを見込めなければならないメーカー、パーツサプライヤーも、今さら 4気筒縦置きFR なんてプラットフォームもドライブトレインも作れる訳がない。

 そこへこだわり抜いた FRスポーツ を送り出せるのも、スバル ボクサー ならでは、そして 富士重工業 ならではこそ成せる業。そして、WRX STI というグローバルでも傑出した運動性能を誇る AWDスポーツ も、現在では スバル でなければ作れない、素晴らしい一台である。まさしく 「日本の誉」 である。

 我々 スバリスト は確かに数は少ないが、作り手の 「こさわり」 を理解できる 「目」 を持っている。それは スバル がこれまで、素晴らしいクルマを送り出してきてくれたおかげだ。

 だからこれからも、あなたたちの 「こだわり」 を 「形」 にして問いかけて欲しい。私は、そして世界中の スバリスト は、きっとそういう 富士重工業 の 「こだわり」 をいつも心待ちにしている。

 スバリスト とは、それを理解し、それを買い、そして それを 何よりの 「誇り」 としている人々なのだから。

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1/24 の プラスチックキット では、初代 GC / GF型 は ハセガワ、フジミ が、GDB は フジミ、タミヤ が、そして GRB は 青島文化教材社 が送り出してくれて、その他ダイキャストモデルの各スケールでも世界中の多くのメーカーが、夥しい数のモデルを発売している。

 このことだけでも、どれだけ「WRX」 が、世界中の人々から暖かい思慕と愛情を注がれているのかが理解できるだろう。

 単純に考えて、現在、そんなクルマが他にいくつあるだろうか。

 ところで今回の私の製作の 「こだわり」 は、スペックC であるということ。

 まあ、実車では、本来ホイールが7スポークの鋳造でデザインが違うし、フロントバンパーのフォグライトも削除していねえじゃねえかよっ!と突っ込まれれば・・・(笑)。ただ、ホイールはともかく、フォグは実際に買うとなれば私は付けるから、これは 「スペックC」 なのよ。ほら、フロントガラスのワイパーデザイアーが付いてないでしょ?(笑)。

 そういう 「ひとりノリツッコミ」 はさておき、前期 2007年バージョン も18インチ BBSホイール仕様、標準5スポークホイール仕様、チューンド、痛車仕様とバリエーションも豊富で、GRB に思い入れのあるモデラーなら 「ちょっと頑張っちゃおうかな?」 と思えるこのアオシマ製 WRX STI なのだが、今回製作してみて、プロポーションはもとより、ディティール再現のためのパーツ割りなどもとても良く考えられていて、中級から上級のモデラーならきっと自分の 「こだわり」 を形にできる内容を持ったキットだ。

製作しようと決めて、ディティールを作り込んでいく時に、「もうちょっとどうにかなんないかな?」といつも思うのが、メタルパーツの質感や、オーナメントの立体性だったりする訳だが、この 青島文化教材社 1/24 GRB には、右のようなディティールアップパーツが発売されている。

 どちらも価格は 1000円以下だから、こだわって作りたい人には充分リーズナブル。

 このキットの発売元である アオシマ製 の ディティールアップパーツは、エッチングパーツ主体のもので、グリルメッシュ、ディスクローターなどは 「お約束」 だが、純正オプションのフロアマットまで付属されているのにはたまげた。

 下は ホビーデザイン製 のオーナメントセットで、六連星 や STI などの再現性も目を見張るデキで、これひとつで4 〜 5台分賄えるので、スバル の他車種の製作を考えている人ならとっても 「お買い得」 である。

 今回はこの 2つ のパーツを使用した。

青島文化教材社 1/24 ディテールアップパーツ No.04 GRB インプレッサWRX STI'10用 エッチング&メタルパーツセット
Hobby Design 1/24 スバル インプレッサ X メタルエンブレム ロゴ セット アオシマ HD01-0033
アオシマ 1/24 スバル WRX STI 2010 スペックC WRブルーマイカ(8)

先にカラーデータを紹介しておくと、もうこれは当然 スバリスト 御用達、タミヤカラースプレー TS50 マイカブルー で、これは タミヤ が 1/24 スポーツカーシリーズ No.199 スバル インプレッサ WRC '98 モンテカルロ仕様 とともに発売したものだから、色合い、深みはもちろん スバリスト の目から見てもバッチリ。特筆すべきは 「塗りやすさ」 で、メタリックの塗色はムラやたまりができやすいものなのだが、ラフに吹いてもしっかり均一についてくれるところが嬉しい。これを少し濃い目に 4コート、仕上げは クレオス スーパークリヤー UVカットを 3コート 吹いている。

 私はこれがあるから、WRブルーマイカ の時は、いちいちエアブラシなんか使う気にもならない。1か月に 4、5本 は使っているだろう。我が家の 「常備品」 である(笑)。

 最近のキットは、バリエーション展開を考えて、前後バンパー、フロントフードがボディと別パーツになっているものが多い。購買層の間口を広げるために、プラスチックキット・メーカーもこうした涙ぐましい努力をしているのだ。

 それを理解した上で、私はボディパーツが分割になっているのが好きではない。別々に塗ると、ソリッドのボディカラーならそう気にならないが、メタリックカラーの場合は、どんなに注意深くペイントを乗せても色違いが出てしまう。実車の査定なら 「ここ塗ってるでしょ?」 と突っ込みたくなるところである。

 そこで、そういうボディパーツが分割となっている場合、私は少なくとも バンパー、フロントフード はボディに固定した上で塗装する。

 そうすると、このキットの場合、フロントフードのエアインテークの奥に整流用のフィンが、ご丁寧に別パーツで用意されていて、フロントフードを固定してしまうと 「後付け」 ができない。ヘッドライトASSY と フロントグリル も、フロントフード を固定してしまうと 「極めて」 組み辛くなってしまう。

 まあ、こういう 「齟齬」 は、こだわって作る場合には 「よくあること」 で、今回、件のインテーク奥の整流フィンは、その下のパネルを少し広めに切り取って、塗装後に裏から後付けできるようにしているし、左右ヘッドライト、フロントグリルは後付けできるように形状を金ヤスリで整えて、接着面やその面積もきちんと確保している。

 経年で接着剤の劣化からバラバラになってしまわないように、という私なりの 「工夫」 である。

アオシマ 1/24 スバル WRX STI 2010 スペックC WRブルーマイカ(9)

シャシーの造形も、いつもながら素晴らしいの一言。

 リヤマフラーASSY は、GRB ではシングルマフラーの両側出し、GVB ではデュアルマフラーとそれぞれ異なっている。GVB のリヤデフ後方で二又分岐するエキゾーストパイプ処理も魅力的だけど、GRB はマフラーエンドがステンレスポリッシュで光沢を出している。マフラーを替えないのなら、個人的には GRB のテールエンドの仕上げの方が好きかも知れない。

 GE / GH型インプレッサ から ダブルウィッシュボーン に変更されたリヤスペンションの構造もつぶさに観察できるし、フロントのロアアーム後方のボディとの連結方法が、BC5 から永らく続いた 縦置きゴムブッシュからボールジョイントに変更され、この 2010年モデル からはピロボールブッシュに変更されている。それを支持するプレートガセット まで再現されていることに感動する。

 ボディフロアは、GDB型 インプレッサWRX STI E型 から、整流用のアンダーカバーで覆われていて、実際はこのようにボディカラーは見えない。

 ただ、実際に私が GRB型 WRX STI スペックC を買ったとしたら、多分もう少し軽量化するために剥がしちゃうだろうなとは思う(笑)。最近はダートは走らないし、普段の足は ビストロ スポーツ だから、雨の日は乗らないし、BC5 も時々は走らせてあげないといけないし。

 やっぱり 「軽さ」 は、走る上では、今も昔も変わらない、絶対的な 「正義」 だ。おそらくオーディオスペースもダミープレートそのままなんじゃないだろうか。ラジオなんか要らないよ。EJ20 のエキゾーストノートにずっと身を委ねていられるのなら。

アオシマ 1/24 スバル WRX STI 2010 スペックC WRブルーマイカ(10)

と言いつつ、マルチファンクションディスプレイがオーディオスペースに鎮座しているのはどうゆうこと?というツッコミは却下。

 ディーラーの試乗車で、殺風景なオーディオスペースの穴を塞ぐのに両面テープでよく貼ってあるじゃないですか。あれですよ。あれ。

 ちなみに、インストルメントパネル左右に伸びる加飾パネルには、カーボンデカールを貼付して、ドライカーボン仕様にしました。これは絶対にやるね。

ちょっと 「やらしい」 くらいにレッドステッチを強調したので、なにやら 「妖しい」 雰囲気ですが・・・(笑)。

 本革とアルカンターラの質感をはっきり出そうとしてこうなっちゃたんですね。もう少し本革の部分のツヤを落とした方が良かったなぁ。

 リヤシートバックレストセンターのヘッドレスト左側のセンターシート用シートベルトガイドも、ディティールアップパーツにきちんと入っている。

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フロアマットもこれがあるかないかじゃ、試乗車か自分のクルマか天と地ほどの違いがあるから、こういう部分にも配慮を見せてくれたことには、心から感謝したい。

 ちなみに、ドライバーズシートのフロアマットのアクセルペダル下のビードは一本だけ 「SUBARU」 のロゴが刻まれた短いビードを貼付するので間違えないで欲しい。

 もちろん、WRX の 「ストーリー」 はこれからも続くし、その轍が世界中の WRX を愛する人々によって、世界中の 「道」 に刻まれて行く。そして、スバル が 「あと少しだけ」 EJ という、数々の歴史を飾ってきた 稀有な名機 と触れ合っていられる 「時間的猶予」 を与えてくれたことが、私にはこの上なく嬉しい。

 ここに去りゆく GRB / GVB への手向けとしたい。

 私自身の、心からの敬意と感謝を込めて。

歴代インプレッサ WRX STI

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