フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプRA STIバージョンV リミテッド

フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプRA STIバージョンV リミテッド(1)

まずお断りしておかなければならないのは、今回の製作は、右の フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプR STIバージョンV の改修であるということ。

 だから、表題のモデルは店頭で購入できる訳ではないので念のため。

フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプR STIバージョンV

GC/GF型インプレッサ こそ、スバル というブランドを、世界に認めさせたモデルだ。

 1995年、1996年、1997年 と、スバル を WRCマニュファクチャラーズ・タイトル 3連覇 に導いた 金字塔 は、GC/GF型インプレッサ を長い自動車の歴史に、永遠に不滅のものとして刻み込んだ。

 その 「栄光」 は、ライバル不在という状況で勝ち得たものでも、現在のように、およそベースとなっている市販車からはかけ離れたメカニカルパッケージをレギュレーションで認めて達成したものでも、ある特定のドライバーだけで達成したものでもない。

 世界中のメーカーが群雄割拠して、市販車というパッケージングをベースに凄まじくコンペティティブな戦いが繰り広げられていた時代に、世界シェア 1%未満の、決して予算も潤沢とは言い難かったメーカーが成し遂げた偉業であることに最大の価値がある。

フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプRA STIバージョンV リミテッド(2)

だから、特殊なパッケージングの少量生産の高額なスーパースポーツや、いわゆる 「高級車」(巷で何をもって 「高級」 としているのか、私には理解できないが)でも、千差万別のあらゆる路面、気象条件で、より速く、安全に人を目的地まで運ぶという、乗用車本来の機能に関しては、水平対向エンジン を核とした、スバル の 「シンメトリカルAWD」 には敵わないという 「真理」 がすでに導き出されているといってもいいだろう。

 なぜなら、そのメカニカル・パッケージは、店頭で買い求めることができる スバル と全く変わらないからだ。

 例えば、グループAを席巻した、この GC型インプレッサ555 では、エンジンはおろか、トランスミッション、リヤデフの搭載位置さえ変更できなかったし、1997年 から始まった WRカー規定 でも、エンジン搭載位置を 25mm 後方に下げたが、フロントバルクヘッド(エンジンと室内の隔壁)の改修はできなかったので、実質的に変わったことは 「それだけ」 だった。

 それ以降の歴代 インプレッサWRC でも、度々このエンジン搭載位置の変更は行われたが、市販車との関連性がなくなるほどの変更は、2008年のラストシーズンまでついに行われなかった。

 それには理由があって、縦置きの 「シンメトリカルAWD」 では、エンジン搭載位置を車両重心に近づけるべく後方に移動すれば、フロントの駆動を受け持つ フロントデフ も後方に下げざる得ない。そうしなければ、エンジンとトランスミッション に挟まれた クラッチ のスペースを詰めざる得なくなる訳で、容量を考えればそれも難しい。

 一方、直列4気筒 FF ベースの AWD なら、そんな問題は起こらない。メンテナンス性を考慮して、市販車ではエンジンと並列、もしくは後方に配置された トランスミッション の位置を、エンジンの前方に持ってくればいいだけの話である。こうすれば、いくら フロントデフ と エンジン が離れても関係はない。バルクヘッドの改修が認められるなら、いくらでもエンジン搭載位置を後方に下げることができる。

 ただし、そんなメカニカルパッケージは市販車では不可能だ。

 エンジンのメンテナンス性は極端に悪化するし、なにより、乗用車として必要なユーティリティを犠牲にしなければ成立しないからだ。

 ただでさえ、現状で参加しているマシンは、市販車とは何の関係もない エンジン、ドライブトレインを用いたメカニカルパッケージなのに、これ以上市販車と乖離して、そこで得られた技術的蓄積を市販車にフィードバックすることが難しいエンジニアリングで戦って、そのメーカーが得る勝利に大した価値はないと私は思う。

 なぜなら、その勝利はメーカーの自己満足にはなっても、ユーザーには何の利益ももたらさないからだ。

 単に 「おフランス、おイタリア、おドイツ製のクルマならオシャレだしぃ〜」 というのなら、それはそれで結構なことだが、そんなこと私は知らん。勝手にしやがれ。

 「自分の乗っている インプレッサ が世界の頂点で戦っている」 という、市販車とラリーカーの緊密な結びつきが、ラリーに参加するメーカーの情熱と、ユーザーがそのメーカーへのシンパシーを共有できた幸せな時代。

 その時代を席巻したのが、このGC/GF型インプレッサなのだ。

フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプRA STIバージョンV リミテッド(3)フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプRA STIバージョンV リミテッド(4)
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フジミ の 「1/24 インチアップシリーズ」 と聞くと、1980年代後半の、単にホイールベースをその車種に合わせただけの同じシャシーで、モーターライズ、社外エアロパーツにアルミホイールが付いていて 「トレンディ」 (死語か?)だけど、作ってみれば 「辛うじてそのクルマに見えるかも」 という程度の、失礼ながら 「お粗末な」 一連のシリーズを思い出す。

 それでも、このシリーズでしかモデル化されなかった昔懐かしい国産車も数多くあって (それなりに手を加えることが大前提だけど) 形として残してくれたことはありがたいことだ。

 スバルは1台もなかったけどね(笑)。

 そんな フジミ が「変わった」と思ったのは、やっぱり、ポルシェ911、ランボルギーニ・カウンタック、その他のスーパースポーツを次々とモデル化した 「エンスージアストモデル」 からだ。

 各モデルの正確なスケールダウンやディティールの正確さはもちろん、そのディティールの再現を凄まじい数のパーツに分割して行うという、フルディティールキットの王道の頂点を極めたキットで、その細かいパーツのモールドも目が覚めるような素晴らしさだった。

 それ以降の 「インチアップシリーズ」 は、かつてのように使いまわしのシャシーではなく、エンジンレスとしても立派に大人の鑑賞に堪える出来映えで、しかも少ない部品点数で作りやすいのが特徴だ。

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その フジミ の 「インチアップシリーズ」 は、GC8 インプレッサWRX の E、F、Gタイプ、つまり、STIバージョンでいえば、バージョンW、バージョンX、最終モデルである バージョンY をモデル化している。

 前期型 である、A、B、Cタイプは、ハセガワの方で(しかもスポーツワゴンまで!) 「追っかけ」 が利くので、モデラーとしての 「難関」 は、Dタイプ、ということになるだろう。

 Dタイプ と Eタイプ は、エクステリアでの違いは、サイドスカートがカラードになる以外全くないのだが、インテリアトリム が A、B、Cタイプ と共通で、SF型フォレスターと部品の共用化が図られた Eタイプ以降 とは違うので、ハセガワのキットとのコンバージョンは必要となってくる。

 そうなると、もっとも 「難易度」 の高いモデルは、Dタイプ の GF8型 インプレッサ スポーツワゴン WRX STIバージョンV ということになる。ボディとインテリアトリム両方のコンバージョンが必要だからだ。

 実は、手掛けて挫折したまま棚晒しになって埃かぶってるんですけど・・・(涙)。

フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプRA STIバージョンV リミテッド(8)

そんな訳で、結構手掛けて挫折して棚晒しになっているキットが 「不良在庫」 として、普段は目に付かないところへ仕舞い込まれているのだが(汗)、これもそのひとつ。

 フジミ の GC8 インプレッサ はクーペボディのみなので、セダンボディに改修する場合は、ドアの筋彫りと、サイドウィンドウ後端の処理をやり直さなければならない。

 これは結構厄介な問題で、今じゃ筋彫りも使い慣れたカッター一本でチャチャッとやってしまえるが、ボディパネル埋め込みのドアノブの筋彫りは何度やっても頭が痛い。

 まあ今回は、前回の 「手直し」 ということで チャチャッとね(笑)

フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプRA STIバージョンV リミテッド(9)

だからシャシーの方は、もうその時に完成していた。

 自分が過去に作ったキットは何度見ても笑ってしまう。この時は、STIスポーツパーツ の ピロボールブッシュ組み込みのラテラルリンクとトランスバースリンク、砲弾マフラーを装着したのね(笑)。こういうこと、実車でもやりましたねぇ。散々。

 ただ、残念なことに、このキットではフロントパイプとセンターパイプは交換できません(笑)。シャシーと一体成型ですから、これやり替えるのは大変です。リヤマフラーだけでガマンしてね。

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インテリアトリムはブラック一色なので、苦労はありません。

 センターパネルの質感と空調コントロールダイヤル周辺に 「それらしく」 色を乗せてやれば 「それっぽく」 見えるもんです(笑)。

 でも、STIバージョンの専用装備、チェリーレッドのステッチ付き MOMO ステアリングだけはしっかり・・・。

 それにしてもブラックのトリムカラーに真っ青なシートが映えること映えること。

そもそも、最終型の Gタイプ のリミテッドではなく、この Fタイプ のリミテッド を作ろうと思ったきっかけがこのシートだったことを思い出した

 本来なら 「六連星流星群」 のマークがある位置に、STI のロゴが斜に構えている奇妙な刺繍。

 実は、このバージョンXリミテッドが企画された、WRC 1998年シーズン終了時点で、まだ件の 「六連星流星群」 のマークは誕生していない。

フジミ 1/24 インプレッサWRXタイプRA STIバージョンV リミテッド(11)

というのは、1998年シーズンをもって、1993年以来、SWRTのメインスポンサーだった、BAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社)が離脱することが決定していて、そのために 「555」 のロゴが使えなくなったのだ。

 だから、この STIロゴ の位置には、本来、「六連星流星群」 ではなく、「555」 のロゴが入るはずだったのである。

 そして、この 1998年シーズン をもって、スバル の ヒーロー だった コリン・マクレー がチームと袂を分かった。

 このふたつの事実は、スバリストにとって受け入れ難い、悲しい現実だった。

 SWRTの台所事情は、他のチームと比べて対等とはいえないまでも、BAT のスポンサーマネーのおかげでチーム力を維持してきたし、インプレッサはそのメカニカルパッケージの優位性で、そしてコリンの 「ここ一番」 の相手に戦意を喪失させるような爆発的な走りで、スバル は他チームのマシン以上の速さを維持し続けていたはずだった。

 その歯車のふたつが一度になくなるということは、どんなに控え目に見積もっても、今後マニュファクチャラーズタイトルは狙えないことを意味していた。

 拭いきれない不安 ----- だが結局、クルマを走らせるのは人である。

 2008年12月17日、当時の 富士重工業 森郁夫社長 が、WRC撤退の緊急記者会見で、 『「・・・コーナーが(スバルのチームカラーである)青一色に染まっているのを目にすると・・・」と発言した直後、突然涙を浮かべて数秒声を詰まらせる 』 シーンがあった。

 1990年、プロドライブと二人三脚で WRC に飛び込んだとき、待ち構えていたハードルの高さとそれを越えていくための道程の果てしなさに 我々スバリスト も途方に暮れたものだった。富士重工業本体 も経営危機からまだ脱しておらず、成績低迷を理由に撤退、という決断はいつでもありえた。

 「もっと速く、もっと強くなりたい」 という情熱がこの人々にあったからこそ、レガシィ は、インプレッサ は走り続けることができたのだ。その道程の途中で、少しずつ、スバル を応援してくれる人の姿が増えていった。

 まだフル参戦もしていなかった時代に、2m四方はあろうかという 六連星 と SUBARU をあしらった手作りのフラッグを掲げて声を上げている観客の姿を見て愕然としたことがある。

 そんなことするのは私だけだろうと思っていたから(笑)。

 そして、終わってみれば、実は スバル を応援していた我々が、スバル を走らせていたことに気付くことになった。

歴代インプレッサ WRX STI

そんな時代の 「曲がり角」 に、この インプレッサWRX STIバージョンX リミテッド はいたのである。

 そして現在 ----- すでに新たな胎動は始まっている。


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