フジミ 1/24 レガシィB4 RSK

フジミ 1/24 レガシィB4 RSK(1)

今回は、フジミ 1/24 レガシィB4 RSK を紹介。

 フジミ は、BE/BH型レガシィ の、D型以降の後期型を、ツーリングワゴン、B4 ともにモデル化していて、それもターボモデルばかりでなく、2.0L NA の TSタイプR、ブライトン、3.0L NA のツーリングワゴン GT30、B4 RS30 まで手がけている。

 それだけ、この BE/BH型 レガシィには、フジミ にも、キットを買い求めるユーザーにも、こだわりと思い入れが強く、なおかつ深いものがある、ということなのだろう。

 そして、この BE/BH型 レガシィ は、C型までの前期、D型以降の後期を問わず、 数え上げればキリがないほど数多くのメーカーが、さまざまなスケールでモデル化している。とにかく、エコカー全盛の現在にあっても、この BE/BH型レガシィ への支持は根強い。

フジミ 1/24 レガシィB4 RSK(2)

私のスバリスト人生 40年で、BC/BF型BD/BG型、そして BE/BH型レガシィ は、本当に数多くのことを教えてもらった、特別な、大切なクルマたちだ。

 私は スバリストだ。スバル 以外のクルマでいくら速く走れても何の意味もない。

 面白くもなければ、楽しくもない。スバル で他のクルマより速く走りたい。

 そのためにドライビングの腕も自分なりに磨いてきたし、現在でもサーキットの走行会には、機会を見つけてできるだけ参加するようにしている。

 クルマ を走らせれば、メンテナンスも必要だ。BC5 レガシィRS で コンペティションに参加するようになって、必要に迫られて自分でクルマを直し始めた頃は、失敗の連続で、見立て違い、締め忘れ、組み間違いなんていうのはまだ序の口で、シロウト整備でエンジン、トランスミッションに自ら 「致命傷」 を与えてしまった経験も一度や二度ではない。

 そんなときは みじめ だ。自分の無知と無力さを嘆く。だが、直さなければ走れない。どうしてそうなったのかを必死になってひたすら考える。食費を削って部品を買う。部品をムシりに足繁く解体屋に通う。部品が手に入ったら、寝る時間を削ってまた BC5 の下に潜り込む。空が白み始める頃、エンジンが息を吹き返す。

 さぁ、仕事に出かけるか。

 そんなことを 10年ばかり 繰り返しているうちに、頭のデキの悪い私の中にも少しづつ 「経験値」 というものが蓄積されていく。いつでも全開にできるように、何をクルマにしてやらなければならないのかが分かってくるようになる。

 BC/BF型 から BE/BH型 レガシィの間に、私はあらゆる 「間違い」 を犯してきたといっていいだろう。だが、恐れることはない。壊れたら直せばいい。間違ったら、次には同じ間違いを繰り返さないように注意深くやればいいだけの話だ。

 BC/BF型 から、この BE/BH型 レガシィ までに、世界的に見ても他のメーカーではちょっと考えられないペースで施された夥しい数の変更を、私はこの手で知っている。

 そして、軽く 50〜60万キロ は下らない距離を、BC/BF型 から BE/BH型 レガシィ で走っている。

 そういうやり方で 「彼ら」 と接してきたからこそ、私はこの レガシィたちを身近に、そして愛おしく感じることができるのだ。

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この BE/BH型レガシィ までで、富士重工業 は 「グランドツーリング」 という、どうにも捉えどころがなく抽象的な言葉を、レガシィ という 「言葉」 で具現化できたと私は思う。

 それを定義付けるとすれば 「1,000km を、速く、快適に、安全に、しかも一気に走り切る性能」だ。

 500kmだと東京から大阪くらいか。ちょっと短いな。

 私は、関東から福岡までの 1,200km以上 の距離を、自らドライブしてクルマを持ち帰ることを 「仕事」 にしていた時期がある。まぁなんとも 「おバカ」 な話だが、大体 100台 も持ち帰っただろうか。いたって真面目に楽しくやっていた。無論、持ち帰ったクルマの 8割 は スバル である。

 日本には四季があり、梅雨もあれば凍てつく冬もある。山がちだから 1,200km の行程の間、いつも天候や路面状況に恵まれることも少ない。だがクルマで走り出したら最後、家まで帰り着かなければならない。

 例えば、「冬、真夜中、雨、中国道」 というキーワードを聞くと、私は緊張する。中国道は山がちでアップダウンと 400R 以下のカーブが続き、道幅は狭く、結構深い轍が路面についている部分が多い上に、照明は少なく、暗い。それで冬で雨なら凍結している路面がある可能性も高い。

 こういう時に一番頼りになるのは、クルマとしてのシャシー性能はもちろん、何よりトラクション (駆動力) だ。おドイツ製高級車だろうが、イタリア製スーパースポーツだろうが、2WD ならお断りである。冗談じゃない。

 早く、無事に、家に帰り着きたいのだ。

 2WD で 「グランドツーリング」 は語れない。クルマが、近所のコンビニやショッピングモールまでの 「足」、あるいは、せいぜい自分で走る距離は 100km か 200km、というヒトなら、なりはデカいが、中身は 「すっからかん」 のドンガラをいつも引っ張って走っている、まるで自分の頭の構造を晒しているかのようなミニバンや、軽自動車でもいいだろう。

 だが、私はクルマに乗るすべての瞬間を楽しみたいと思う。少しばかり足場が悪くなっても気兼ねなくリラックスしていられて、時には後席に人を迎えることができて、荷物も載せられる。

 「グランドツーリング」 での 「速さ」 とは、最高速でも、0 - 400m でも、筑波サーキットのラップタイムでもない。長距離を一気に走り切る時の、「心が感じる時間の長さ」 なのだ。

 それを最も短く感じさせてくれる、しかもその行程を一番 「愉しませてくれる」 クルマは、私の中では、やはり レガシィ を置いて他にはない。

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この フジミ の レガシィB4 も、BH型ツーリングワゴン と併せて、これまで請われて何度も製作している。

 だが、ストレートに組んでも、どちらも BE/BH型レガシィ にならない。

 理由は、詳しい数値は忘れてしまったが、カタログ諸元の全高から最低地上高を引いた数値、つまりキットでいえば、ルーフ頂部からサイドスカート下端 1mm 下のリヤデフ下端を想定した位置までの数値が、実車の諸元より、1.5mm から 2.0mm 少ない。

キットのサイドグラフィックを見るかぎり、フロントフェンダー、フロント/リヤドア、クォーターパネルの取り合いにムリは感じられないし、側面図と重ねてみても、かねがね正確にスケールダウンされているのだが、ウィンドウグラフィックは明らかに実車に比べて高さが足りていない。

 こういう 「天地に薄く、低く見せる」 というのは、かつての 「インチアップシリーズ」 で、特に R30型 スカイライン2ドアハードトップ RS-XターボC なんかもヒドかったけど、モデラーにしてみれば、久々に フジミ の 「悪癖」 が出ちゃったかなぁ〜 といった感じである。

 この 「1.5mm から 2.0mm」 なんて大したことないだろうと思うかもしれない。しかし、それを 24倍 すれば、それぞれ 36mm、48mm という数値になる。

 ウィンドウグラフィックが 40mm も低ければ、まるで違うクルマに見えても仕方がない。作例では、ルーフとリヤクォーターピラーを、上の写真の位置で切断し、ドアミラー下の部分に切り込みを入れて、フロントピラーをほんのわずか起こして、リヤクォーターピラーの切断部分で 1.5mm 上げて、ルーフ切断部分との兼ね合いを見ながら、それぞれ プラ板 で裏打ちして接続し直している。

 この プラ板 の裏打ちは、ガラス部品との取り合いがあるので、0.2mm 程度の薄いもので接続した上で、引けと経年変化が少なく、強度が出しやすい ポリエステルパテ で接続部分を埋めて、接続部分の プラ板 の裏打ちをできるだけ薄く削っている。

 メンドいけど、このキットではこの作業をやっておかないと、仕上がりに大きな不満を抱えることになってしまう。

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それさえ修正すれば、いちいちガレージや駐車場まで行かなくても、いつでも手元に BE型レガシィB4 を置いて眺めることができるという訳だ。

 残念ながら、あの心地良いボクサーサウンドの子守唄を奏でてはくれないけどね(笑)。

 この フジミ の BE型レガシィB4 には、バリエーションとして、ボクサー6 搭載の 「RS30」 、トミーカイラB4 も用意されている。RSK と RS30 の違いは、ボンネットフードと、ホイールの仕上げが、ハイラスター塗装かガンメタリック塗装かということのみである。

 ちなみに同梱のデカールは、ツーリングワゴン の GT-B、TSタイプR、ブライトン(!)、GT30 に、B4 の RS30 (RSK 専用のオーナメントは存在しない)が付属しているので、「ステッカーチューン」で悩む楽しみも用意されている。

 でもやるんだったら、やっぱり S401 だよね。

 専用の 18インチBBSホイール は、他車種から流用するにしても、若干加工が必要だからどうしよっかな、なんてね(笑)。カラーはもちろん WRブルーマイカ で。

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斜め後ろから見てみる。

 5ナンバーという枠の中で、機能性と合理性、スポーツセダンとしての躍動感、それに スバル らしい 「野暮ったさ」 が凝縮された、時の流れに色褪せない、魅力的なスタイリングである。

 クルマ、特に 乗用車 のスタイリングとは、ユーティリティや安全性といった機能を満たすのか、デザイン上の目新しさを採って、機能を犠牲にするかの二者択一である。

 スバル の場合、先に来るのはいつも 「機能」 だ。

 正直、スバル のデザインセンスは大したことないと思う(笑)。しかし 「じゃあオマエはセンスあんのかよ」 と問われれば、私は 「ない」 と即答できる。それが年の功というものなのか、年を重ねた厚顔無恥さなのかはさておき、いわゆる 「ブランド物」 を身につける、あるいはメディアが垂れ流す 「流行を追っかける」 ということが 「センスがある」 と勘違いしている人間に、私は 「じゃああんたは『自分』がないんだね。」 と言ってやる。

 「センス」とは詰まるところ、「自分自身」 ということだろう。それが 「ない」 から、高い金を出してブランドにすがる。誰かが言う 「流行の最先端」 とやらを追っかける。

 だが、そういう視点では、例えば 「EyeSight」 は生まれてこなかっただろう。実際、世界中の自動車メーカーが慌てているではないか(笑)。

 スバル360 の、あの 古今東西 見渡してみても 「世界一」 といえるほどの徹底した合理性、機能性の追求も、スバル1000 で育んだ、水平対向エンジンを縦置きにして、トランスミッションとフロントデフをコンパクトにまとめて、左右等長の長いドライブシャフトを備えることで、ロールセンターを適切に設定できる自由度を確保して、卓越したロードホールディングを得るという思想も、そして、それにプロペラシャフトとリヤドライブトレインを接続して、乗用車に最高のトラクションを与えるという論理もあり得なかった。

 私が子供の頃から座右の銘としている 百瀬晉六氏 の言葉がある。

物事に取り掛かる前に、考えて考えて考え抜け。
 そして行動を起こしたら自分の意志でつらぬけ。

40年スバリストをやってきて、この言葉はきちんと現代の スバル たちにも 「つらぬかれて」 いると私は言える。どの時代の スバル をバラしてみてもそう感じるし、死ぬ思いでようやく手にした レガシィB4 2.0GT DIT でワインディングを走ってみれば、ふたつ先のコーナーを回っていく、この BE型レガシィB4 が見えるし、その先のコーナーに BC5 レガシィRS が、そしてひとつ向こうの峠には ff-1 や 360 が走っていく姿すらハッキリ見える。

 林道に入っていく A64 レオーネ1400エステートバン4WD の 「濃い」 後ろ姿やらね(笑)。

 だから スバリスト を続けていられるのだ。

 スバル というメーカーも、こだわりだしたらかなりしつこいが、スバリスト も相当しつこいのである。

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シャシーの仕上がりも素晴らしい。

 特に、この BE/BH型レガシィ から マルチリンク に変更されたリヤサスペンションのリアリティにはちょっとドキドキしてしまう。

 例によって、フロント/リヤサスペンション、リヤマフラーASSY、フロントアンダーカバー、スペアタイヤスペース 以外は全て一体成型なのだが、とにかくモールディングがシャープで、しかも行き過ぎていないので、組みながら、まるで実車の整備をしているように錯覚してしまうほどだ。

 ちなみに、この フジミ の BE/BH型レガシィ は、E-4AT、つまりオートマチックトランスミッションである。

 室内のシフトノブは、マニュアル、スポーツシフトE-4AT、普通の E-4AT と 3種類 凝ったパーツ構成で用意されているのだけど、まあそんな訳で、マニュアルのシフトノブはちょっと選びづらいね。

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今回、どうしてもやらなければならないと思っていたのが、この スバル のコーポレーテッド・カラー である ブルー と ブラック のコンビの 「スペシャルレザー・パッケージ」 だ。

 もう、乗る人に 「身もココロも弊社の色に染まっちゃいなさい!」 といわんばかりの魅惑のカラー・コーディネーション!

 素敵・・・・・。

 これ実車ではさぞかし玉数少ないだろうと思うでしょう?これが探してみると結構新車で買っちゃった人がいるんですよ。

 もっとも、当時の GDBインプレッサWRX STI なんかは標準でもっと 「真っ青」 だったから、スバリストとしては全然違和感なかったね(笑)。それどころか、ステアリングに配されたブルーのレザーにトリムとシートのブルーがいちいち目に入るから、「ああ、俺 スバル に乗ってるんだ」って、ひしひしと 「幸せ」 を感じちゃってたりして・・・。

歴代インプレッサ WRX STI

後ろから眺めてみる。

 ね?いいでしょ?ちょっと欲しくなったでしょ?(笑)

 この 「スペシャルレザー・パッケージ」 を選択した場合、「ブリッツェン」 と同じヘアラインパネルが装着される。

 とにかくモールドがシャープで、BE/BH型レガシィ に乗っていたことがある人なら、「そうそう!ここはこうだったよね!」と嬉しくなってしまうことだろう。

で、オリジナルの場合、オーディオは標準の 「K'sマスターサウンドシステム」 が、オーディオスペースにモールドされている。

 はぁ?何言ってんの? BE/BH型以降の レガシィ 乗るのなら、マッキントッシュ は 「当たり前」 だろう。

 私はジャズを聴く。その昔、今回 B4 2.0 GT DIT を買うのと同じくらい死ぬ思いをしながら、JBL 4344 というスタジオモニター用のスピーカーを手に入れた。パーソナルユースとしては、まさに究極の 「ハイエンド」 といえるスピーカーだ。

ジャスを聞きかじった時、恐る恐る初めて入った ジャズ喫茶 で、私は ビル・エヴァンス トリオ 「サンディ・アット・ザ・ビレッジヴァンガード」 をリクエストした。

 彼は、私にとって 「最高」 だ。

 繊細さ、優美さ、優しさ、抑制されたタッチに込められた、抑えがたい感情 ----- 私が音楽に求めるすべてを彼は持っている。

 彼がこの世に遺したすべての 「音」 を聴きたい。私はこの時、心からそう思った。

 スクラッチノイズの静寂から、いきなりビルが無造作に切り込んでいくイントロで始まる、A面最後の曲 「ソーラー」。

ビル・エヴァンス・トリオ 「サンディ・アット・ザ・ビレッジヴァンガード」

その短いイントロに続き、絡みついてくるスコット・ラファロのベースの太く力強いリズムライン。ポール・モティアンのシンバル。

 二人はタイムをキープすることに徹しない。スコッティ は ビル の出す音に対し、スポンティニアスに ビル を挑発する。一方、ポール も、例えば マックス・ローチ のような正確なリズムは刻まない。

 ビル がプレイのタイドを握っているのではない。その瞬間に誰かが出した 「音」 に三人が反応して、ごく自然にタイドが決まっていく。だが、フリージャズのように破綻はきたさない。原曲のリズムは守るという一定の 「枠」 は常にある。

 そこに凄まじい緊張感が生まれる。その時、その場限りの イリュージョン が展開される。それが ジャズ だ。それをやってのけることができるからこそ 「プロフェッショナル」 といえるのだ。

 かつて、ライブをすっぽされて、クラブの裏で弱りきっているマネージャーの前に、ライブが終わった頃を見計らって現れた チャーリー・パーカー はこう言ったそうだ。

 「俺のギャラをくれ。」

 怒り心頭に達したマネージャーは「お前に払うギャラなんてない!」と怒鳴ったそうだ。

 そこで チャーリー は平然と 「なんで天才が凡人の時間に合わせてステージに姿を現してプレイしなきゃいけないんだ?」と返したそうだ。

 全くその通りである。

 「金を払えば何でも手に入る」というのは、実に 「凡人」 の 勘違い に過ぎない。「奇跡」は金を払って見ることはできない。だが、彼らが遺した 「瞬間」 を、幸運なことに私たちは耳にすることができる。

 その 「音」 に凡人ごときが 「失礼」 があっていい訳がないだろう。 私が通い倒したそのジャズ喫茶の JBL4344 で、私に数々の 「奇跡」 を再現し、ジャズ というものを教えてくれたアンプ ----- それは、マスターが 「私がジャズメンに対して払うことができる、精一杯の礼儀」という、マッキントッシュ だった。

ビル・エヴァンス・トリオ 「サンディ・アット・ザ・ビレッジヴァンガード」

残念なことに、私の部屋の 4344 を鳴らしているのは、古ぼけた マランツ だ。マッキントッシュ のアンプを手に入れるという 「夢」 は未だ叶わないままだ。

 私は スバル に貢ぎすぎた。愛して止まない ジャズメンたち に、ターンテーブルに針を乗せる度に、心から申し訳なく感じる。

 クルマの室内、というのは、音楽を 「愉しむ」 のに最適な場所とはいえない。

やっぱり自分の部屋のスピーカーの前に置いたカウチに深々と身を落ち着けて、オットマンに脚を伸ばして、真剣に、その「音」たちと対峙する ----- これが一番だ。

 クルマとも、いつもそういう心境で接していたいと思う。例えば回転の伸び。おや?いつもより伸び渋ったね。どうしたんだろう?とか、いつものコーナーに、いつものスピードで、いつものようにブレーキを残して進入する。おや、頭の入りがちょっと遅れたね。どうしたんだろう?とか、自分の体に刻まれた スバルたち のデータを検索する。

 戻って、エンジンルームを覗いてみる。リフトアップして足回りをチェックする。多くの場合、その原因は分かる。だが、分からないこともある。ひたすら考える。

 クルマに限らず、物事を深く理解しようと務めなければ、その 「本質」 に辿り着くことなんてできっこない。自分で考えて、自分で手を下すからこそ、作り手との心を通わすことだってできるのだ。

 だが、少しばかり肩の力を抜いてクルマで開けた道を走っている時に、聞いてみたい 「音」 も時々はある。

 それは、ソニー・クラーク だったり、ルー・レビー だったり、カール・パーキンス だったり、とにかく どういう訳か ビル ではないのだけれども。

 レガシィ の マッキントッシュ は音場の作り方がとても上手い。60年前の録音技術なんて、現在のそれと比べれば、嵩が知れている。そして 最新の デジタルリマスタリング を施した音源を手にしたとしても、その 「音」 は 現在残っている マスターテープ の音を超えることはできない。

 できるだけそのマスターに近い音を、できるだけいい音で聴きたい。それをカーオーディオで、ということであれば、レガシィ の マッキントッシュ に太刀打ちできるものは存在しない。

 ほかのメーカーの様々なクルマのオーディオも試すのだが、残念ながら彼らはみんな 「分かっていない」 。昔ながらの「クルマ屋が作ったラジオ」の延長線上でしかない。

 そこいらの カーオーディオショップ にクルマを預けるなんてもっと論外である(笑)。高い金を払わされた上に、クルマ のあちこちにキズを作って、「これが最高の音なんです!」と妙に押し付けがましい講釈を垂れられるのが関の山だ。

「クルマで マッキントッシュ を聴く」という素敵な発想。

 これはきっと、この BE/BH型レガシィ の 開発主管 を務められた 桂田 勝 氏の考えだったのではないかと、私は想像している。

 氏は、アメリカとの接点が深い。アメリカで家に招かれて、マッキントッシュ のホームオーディオ が紡ぎ出す 「音」に、 心を動かされたことがあったに違いない

ビル・エヴァンス・トリオ 「サンディ・アット・ザ・ビレッジヴァンガード」

「今度のレガシィ の オーディオ は マッキントッシュで行く」 と BE/BH型レガシィ 開発の段階で 氏が言ったかどうかはともかく、BE/BH型レガシィ は、スバル らしい 走り と 機能性、合理性を研ぎ澄ました、すばらしいクルマに仕上がった。

 そして ----- マッキントッシュ ----- クルマがある人生を愉しむために、その移動という行為の瞬間、瞬間に彩りを添える、すばらしい 「音」 までも用意してくれたことに、スバリストとして、そして ジャズファン として、私は心から感謝したい。

 氏はまた、初代 BC/BF型レガシィ から、一貫して スバル の 「走り」 を自ら磨いてきた方の一人である。だから、氏は私に、人生を歩いていくための 「様々な多くのすばらしいもの」を授けてくれた人ともいえる。

 一筋縄ではなかったけれど。

 今回の BE型レガシィB4 は、ブラックトパーズ・マイカ である。

 何度かお逢いした時に、氏が私に投げた、優しく、情熱的で、透徹した知性を湛えた瞳と、温かい手の温もりを忘れない。


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