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ノレブ「国産名車コレクション」vol.20 1/43 1966年 スバル1000スーパーデラックス

ノレブ 1/43 スバル1000 スーパーデラックス

スバル1000のミニチュアカーといえば、古くはダイヤペットのアンチモニー製の4ドアセダンがあって、稀少性や経年変化の面から箱付き美品ともなれば、それこそ5万円は下らないし、日本初のプラモデルメーカーといわれている「マルサン」倒産後に、その「マルサン」の技術者たちが集まって起こしたという、尾高産業製の1/32 スバル1000 スーパーデラックスがあって、上げ底ゼンマイ式のキット内容ながら、実車のポイントを確実に捉えたプロポーションで、シリーズ中のいわゆる「マイカー元年」のスバル1000のライバルだった、カローラ、サニー、ベレットともどもコレクターに珍重されてきた経緯がある。

 しかし、より生産性の高い、亜鉛ダイキャスト製ミニカーへの本格的な移行は、国内では1970年代に入ってからで、やはり1971年の「トミカ」の登場は、ミニカーが「コレクターズアイテム」から「子供のおもちゃ」への決定的な転換点を迎えた、ひとつの大きなマイルストーンといえるのかもしれない。

 そうした高度経済成長期は、大量生産・大量消費の経済構造、つまり、より大きな市場規模を持つところに、安く、大量の商品を供給するスケールメリットを生かせる車種選定がキーポイントになるわけで、そうなってしまうと1970年代、そして1980年代を通じて「レオーネ」しか登録車を持ち得なかった富士重工業のクルマが、ミニカーメーカーのモデル化を検討する俎上へ上がることも、まずなかった。

 だから、ミニカーのダイキャスト化が一般的になった時点で、すでにモデルライフを終えていたスバル1000/ff-1シリーズが顧みられることなはなく、そもそもスバルのミニチュアカーが少ないのはこうした事情が影響しているのだろう。

ノレブ 1/43 スバル1000スーパーデラックス

そうした意味で、このノレブ製 1/43 スバル1000スーパーデラックスの登場は、永らく続いてきたそうした状態に一石を投じるものとして、少なくとも私にとってはあまりにも衝撃的な出来事だった。

 確か、コナミ製の1/64 スバル10002ドアセダンの登場と前後する時期だったと記憶しているのだが、より鑑賞に堪える1/43というスケールで、あえてスポーツセダンではなく、スバル1000前期型のA522、しかもスーパーデラックスのシャイニングベージュを選んだセンスには脱帽だ。

 

ノレブ 1/43 スバル1000 スーパーデラックス

そうした私の「個人的前口上」を除いても、このプロポーションとディティールの再現の完璧さは、充分「衝撃的」で、ただ舌を巻くしかない。

 このスバル1000のイメージカラーともいえる純正色「シャイニング・ベージュ」はスバル1000、ff-1でスーパーデラックスにのみ設定された塗色で、モデラー泣かせの微妙なボディカラーだ。

 たとえば、印刷品質の安定しない当時のメーカーフォトではどうにもイメージがバラバラで、なんとも捉えどころがないのだ。

実は知人がこのオリジナルの「シャイニングベージュ」のスバル1000を所有しているので、その実車と比較させてもらったのだが、若干暗めだが、その微妙な色調が見事に甦っていることが確認できた。

 この「実車より若干暗め」というのには理由があって、たとえば現在のインプレッサの「WRブルーマイカ」をミニチュアのインプレッサに吹いてみても、実は「WRブルー」に見えないのだ。(もっとも実車の「WRブルー」ではマイカ成分が大きすぎて、かつてのチバラギ仕様でよく見られた「ラメ塗装」に見えるのが関の山だろうが・・・。)

 そういう意味で、なかなか実車のカラーイメージをミニチュアに生かす、というのは骨の折れる作業なのである。

ノレブ 1/43 スバル1000 スーパーデラックス

裏板を見ても、その忠実な再現性には、ただただ目を見張るばかりである。

 スバル1000を知る人であれば、スバル1000/ff-1の「象徴」であるインボードブレーキや、フロントのクロスメンバー、サイドシルに迂回したエキゾーストパイプ、フルフラット・フロア、トレーリングアームの位置、そしてよく腐る「タイコ」とそこから後ろに伸びるエキゾーストパイプの形状など、思わず感動してしまうことだろう。

 これだけでもスバル1000が発表された1965年の時点で、スバル1000というクルマがいかに時代を超越していたかが理解できる。

最低限の機構で必要な機能、乗用車ついての要件をすべて満たし、用いる機構については妥協を許さず吟味を尽くし、最高の機能を持つ機構を組み合わせて、最良の商品を作る。

 しかも「人海戦術」に頼ることが重厚長大産業の生産現場においては日常茶飯だったこの時代に、フロントサスペンションとドライブトレイン、そしてエンジンを一体で組み込む「モジュール方式」の採用など、すでに生産性を考慮した設計となっていることも驚異的で、これはおそらくスバル1000が世界初である。

 また、トーションバーをアッパーアームに接続したフロントのダブルウィッシュボーンサスペンションは、量産車では異例のインボードブレーキの採用と相俟って、フロントホイールを転舵するキングピン軸と前から見たホイールの中心線を一致させた「センターピボットステアリング」という、他のマスプロダクツメーカーの開発者なら、およそ考えもつかないようなサスペンション形式を完成させた。

 スバル360に引き続きとなる四輪独立懸架の採用もそうだが、他メーカーではライバル車種はおろか上級車種でさえ、板バネ+リジッドアクスルが当然だったこの時代に、である。

ノレブ 1/43 スバル1000 スーパーデラックス

スバル1000について語り出せば、とてもこのスペースだけで語り尽くすことはできないので、別項に譲ろう。

 室内の再現も見事。ダッシュボードの形状やベンチシート、ドアトリム、コラムシフトレバー、果てはダッシュボード上のスーパーデラックス専用装備であるオートクロックまで、「これでもか!」といわんばかりの製作者の意気込みには本当に頭が下がる。

 ちなみにそうしたディティールは完璧なのだが、色乗せはあっさりとしている。特にドアトリムやシートはユーザー自身での着色を前提としているのか、ありがたいことにホワイトですでに塗ってある。気になる方は、裏板から2本のビスを外すことで室内には容易にアクセスできるのでぜひ挑戦してみてはいかがだろう。

 モデルにはちょっと大げさな「箱」が付いてくる。また、カートピアでもおなじみの自動車評論家、川上完氏による解説本が付属していて、解説よりはあまり見たことのないメーカーフォトや資料が「ちょこっと」掲載されていて、スバリストにとっては嬉しいだろう。

 スバリストならぜひひとつ持っていて欲しいマストアイテム、というのが私の結論だ。


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