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日本模型 1/18 スバル レオーネ スイングバック 1.8 4WD バハマオレンジ

日本模型 1/18 スバル レオーネ スイングバック 1.8 4WD バハマオレンジ(1)

今回は、日本模型 1/18 スバル レオーネ スイングバック 1.8 4WD を紹介。

 ニチモ といえば、1/20 富士 FA-200 エアロスバル という、スバリスト にとって、特別な、そして 目も眩むような 「宝石」 を遺してくれたメーカーなのだが、このキットも絶対に忘れることはできない

 まあ、なにしろ、ここまで手の込んだ駆動系を持ったプラスチックキットは、RC を除けば、私の知る限り 「空前絶後」 で、なおかつ 「凝れる限りはディティールにも徹底的にこだわる」 というのだから恐れ入る。

 時代としても面白いところで、AMT スバル ブラット のところで少し触れたのだが、アメリカで 突然 25% の法外な輸入関税を課されることになって、国内ピックアップトラック4WDの各メーカーは、国内に販路を求めて一斉に発売。

 それが、1979年10月 の 2代目 レオーネ4WD のデビューとたまたま重なってしまった。

19977年10月 A34型 レオーネ4WD CM

富士重工業 も負けてはいない。初代 レオーネ 4ドアセダン 1600 4WD SEEC-T が 1977年9月、ロンドン 〜 シドニー 3万キロラリー を完走した後、新たに 「はがねのチャレンジャー」 をキャッチコピーに、「レオーネ4WD全国キャラバン」と銘打って、現在の EyeSight 並みの体験イベントを全国各地で開催していたし、この 2代目 レオーネ4WD からは、全国のディーラー単位で 「スバル4WDクラブ」 を設立するなど、その拡販に積極的に取り組んでいた、楽しい時代である。

1977年10月 レオーネ4WD CM

だから、アオシマ なども ツインモーターの4WDシャシーで、ハイラックス、ダットサントラックを数多くバリエーションを展開して発売していたものだ。

 扱いづらかったけどね(笑)。ステアリングが曲がらないから。

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一方、2代目 となる AB型 レオーネ4WD は、それまで ボアアップ で、スバル1000 の EA52型 977cc から排気量拡大を続けて成長してきた、EA71型エンジン のストロークを、ついに 7mm 延長して、1,781cc の EA81型 に到達。グロス値ながら、ついに 100ps の 「大台」 に乗った。

 そして、1.8Lシリーズ には、2速 の副変速機を備えた 「デュアルレンジ」 を採用した。この威力はエンジンのパワーアップと相まって絶大で、泥濘、急坂登坂など、例のピックアップ4WD が入っていくようなところでも、大抵の場所は朝飯前でこなせてしまった。

 その 2代目 レオーネ4WDシリーズ の中でも、凄まじい悪路踏破性を誇ったのが、この スイングバック 1.8 4WD で、セダン4WD に対し、ホイールベース を 80mm、全長 を 270mm 切り詰めたことで、急坂登坂 の際の、デパーチャーアングル、ランプブレークオーバーアングル は、205mm の最低地上高と併せて、ピックアップ4WD勢 と比べても全く遜色なく、しかも セダン4WD に比べて 35kg 軽かった。

 だから、その実力たるや、まさに 「想像を絶する」 という形容がふさわしく、私自身も、山奥の道とは到底言えない 「ガレ場」 、それこそ 「へばりついて」 登らなければならないような、どう見ても 30度 はある 急坂、というか、もはや 「崖」 と呼ぶべきだろうが、そこを、この スイングバック1.8 4WD がゆっくりと登り切ってしまうさまを見て、震撼したことがある。

 そうした AB型レオーネ4WD にまつわる 「伝説」 は、スバリスト なら、みんなひとつやふたつ経験がある。見てくれはちょっと腰高な乗用車が、いざという時にとてつもない踏破力を発揮する、というのは、初代レオーネ4WD 以来、スバリスト にとっては 「当然」 のことで、その血統は、現在のアウトバック、XV、フォレスターにもきちんと受け継がれている。

 そういう クルマ が、いつの頃からか 「クロスオーバー」 とか呼ばれるようになって、雨後の筍のごとくあちこちのメーカーから出てくるようになった。

富士重工業 の 技術陣 も、SUV は乗用車以上の悪路踏破性を備えていて 「当然」 と考えていることは間違いない。

 誰だってそう思う。「そんな 『なり』 してんだから、そこそこの悪い道くらい走れて 当然 じゃん。」と。

 だが、どうやら実際はそういうもんでもないらしい。

Subaru AWD Uphill Comparison Test
Crossover Challenge - "The Ramp"
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Subaru @ Cannonball

AF型レオーネ スイングバック4WD の 「ネタ」 で、みんなが 「あ 〜!それ知ってる 〜 !」と答えるのが、1981年12月 日本公開の映画 「キャノンボール」 で、ジャッキー・チェン と マイケル・ホイ が扮する 日本人コンビ の 愛車 である、ブラック のボディカラーの一台かも知れない。

 まあ、このおそらく ロケット推進 で空を飛んでいくカットの後、この スイングバック4WD がどのような 「運命」 を辿ったか、スバリスト としては、ちょっと「ジョーク」 が過ぎるんじゃないかと、実は当時、子供ながらに 「ひそかに」 心を痛めていたのだが・・・。

Cannonball Run - Rocket Fire Jackie Chan

スバリスト にして モデラー だから、大抵の スバル の プラスチックキット はストックしている。

 作りたい時に作れないことを考えると、不安で夜もおちおち眠っていられなくなる。重複したり、パッケージ違いで何個も同じものを、というパターンもある。暇ができたら、改修してバリエーションを作るのも面白い。前作った時はディティールに凝らなかったけど、暇ができたら、今度は徹底的にこだわってやる。

 そう、「暇ができたら」ね。だが現実は厳しい。貧乏暇なし。あっちでチャリン、こっちでチャリンと稼いで回らなきゃ食ってけないし。かくして、スバル のプラモデル、スバル の ミニカー、スバル のカタログ、スバル の本、スバル の部品、サービスマニュアルその他が降り積もり、やがてウチの 6畳間 1部屋、床から天井、押入れまで、呉越同舟、仲良く 「占拠」 することになる。

 通称 「スバル の間」 と呼ばれている。

 ここでは、「時間という概念」 はまったく意味をなさない。私は過去から現在、そして国境さえ越えて自由に行き来しながら、スバル の 各モデル を通じて 富士重工業 の 「生きざま」 を、見つめることに、文字通り、時間を忘れて没頭する。

 私は最近、「こだわり」 とは、漬物やヨーグルトと同じように、自分の中にある 「知識」 が、長い年月を経て、自分の中で熟成し発酵し、そして自分の 「経験値」 と何らかの 「符合点」 を見出したとき、初めて自分の中に滲み込んで、自分の言葉でそれを語ることができるようになることに気がついた。

 事に及んで、慌てて資料を漁り始め、ロクな掘り下げもできない メディア や 評論家 のネタなど、読むに堪えない。知識はあっても経験値がないのだから仕方がない。たとえあったとしても、時間的に継続した 「連続性」 がないために断片的にしか語ることができない。だから 「比較論」 に逃げる。

 しかし、その比較さえフェアに行われることはほとんどない。例えば、歴代レガシィ ツーリングワゴン の比較は、多くの場合、FF 、あるいは FR のノンターボのライバルとの比較であることがほとんどだった。横置きFF、縦置きFR を AWD化 する場合、そのドライブトレインは、スバル の シンメトリカルAWD と比較して、より複雑に、経路も長いものになる。それはすなわち駆動系の フリクションロス が増えるということだ。

 私は、AWD でなければワゴンも語れないと思う。ワゴンはバンではないのだから、長い距離をより快適に、どんな天候、路面状況でも安心して走れなければならないと考えるからだ。それにパワーのあるエンジンがあれば、より自由に走れる愉しみと 安全性 が両立する。

 こうしたライバルの AWD のグレードを持ってきた場合、ノンターボであっても、レガシィ の ターボエンジン搭載車 より燃費が悪いことさえある。これは私の経験値だ。そして、オンデマンドで AWD になるシステムを選択した場合、AWD のメリットの恩恵に浴することができないケースが多い。天候や路面条件が悪くなればなるほど、スバル と ライバルたちとの 「差」 は開いていくばかりだ。

 つまり 「一応 AWD ですが。」 ということなのであろう。無論、「が。」 の後ろには続けるべき言葉があるはずだ。スバル の シンメトリカルAWD と比べれば、その性能と完成度で格段の 「違い」 があるのだから。

 だとすれば、永らく レガシィ を 「燃費が悪い」 と叩き続けてきた メディア なり 評論家 の論理の 「根拠」 など、私にしてみれば、極めて 「胡散臭い恣意性」 に基づいたものだと言わざる得ない。

 「恣意性」 が生まれるのは、この世に、完全に 「公正」 な人間なんていやしないし、第一、彼らはそれを 「ビジネス」 としてやっているのだ。

 ん?「お前の言うことも気に食わない」?

 ここは私の HP だ。私は自分の書きたいように書く。別にお代は頂かない。気に食わなければタブを閉じるなり、ウィンドウを閉じればいい。こんな HP を覗いてしまった 「我が身の不運」 は早々に忘れてしまうことだ。誠にお気の毒な話で、心からご同情申し上げる。

 もう二度と来るんじゃないよ(笑)。

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まもなく、2013年 東京モーターショー で、スバル に レヴォーグ (LEVORG) という クルマ が誕生する。

 詳細は、無論まだ分からないが、ティザーサイトでは、すでに 私の レガシィB4 2.0GT DIT や、フォレスターXT に搭載されている FA20型直噴ターボ に、新たに 1.6L が用意されるというから、レガシィ と インプレッサ の間を狙った、市販を前提にした ツーリングワゴン コンセプト のようだ。

一方、ほぼ同時にアメリカで開催される ロサンゼルス・モーターショー でも、富士重工業 は 1台、ワールドプレミア を行うらしい。想像力逞しい 「ネット雀」 があちこちで チュンチュン さえずっているのが聞こえてくる。

 「 LEVORG 」という名前を見て、今回、私は レオーネ ( LEONE ) を連想した。なぜだか 「 LEGACY 」 でなかったのが不思議なところである(笑)。

 レオーネ の プラスチックキット で 「決定版」 ってなんだろう?と、改めてぼんやり考えた。フルディティール・キット は、おそらく AMT 1/25 スバル ブラット が唯一のものだろう。ヤマダ の 1/21? いやいや。エーダイグリップ?日東科学 の A22 レオーネ クーペ1400GSR? いやいや。

 結局、消去法でこの ニチモ の 1/18 レオーネ スイングバック 1.8 4WD ということになった。

 キット自体の完成度は、冒頭に書いた通り、ニチモ の職人たち 「入魂の逸品」 と言って差し支えない。1/18 という、当時としては、いささか 「中途半端」 なスケールだが、全体的なプロポーションも素晴らしいものであることは、まあ、当時 1,800円 という高価なキットだっただけに、そうチャンスは多くはなかったけれど、何度か作ったことがあるから分かってる。

 そういえば、子供の頃以来、作っていない。結局、このキットの 「良さ」 を、単に当時の自分では理解できなかっただけなのかもしれない。だから、レヴォーグ の誕生を祝って、ひとつ誇るべき 「ご先祖様」 を形にしてみようと思った。

 もうひとつは、実はウチには 昭和58年12月登録 の最終型の AF5 がある。58年10月の AB型レオーネ の最後のマイナーチェンジでは、国内向けの 4WDシリーズ は、ハードトップ4WDRX を除いて、全てパワステ付きになった。

 その貴重なパワステ付きの個体なのだが、多忙にかまけてもう10年放置したままだ。そんな後ろめたい気持ちの 「罪滅ぼし」 になれば、とも考えた。

 愛してるよ。

キットを開けてみると、中はこういう構成になっている。

 当時でも、「高級キット」 だけに許された、プリント台紙にプラスチックパックの部品を貼り付けたパッケージが泣かせる。

 もう、1/20 富士 FA-200 エアロスバル の構成 「そのまんま」 だ。

 「そうか 〜 俺、今から 「高級キット」 作るんだなぁ 〜」 とちょっと嬉しくなる。

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ちなみに、この ニチモ の レオーネ スイングバック 1.8 4WD には、「シティ・カウボーイ」 という当時の限定車もバリエーションとして存在する。

 実車の方は、当時の スイングバック4WD には、1.6、1.8 にも設定がなかった コンチネンタルシルバー・メタリック をベースに、紺の凝ったツートーンカラーに仕上げて、派手なステッカーを貼り付けたもの。

 キットの方は、パッケージの他、ボディ成形色がシルバーになって、専用のデカールが付属する点が、今回製作する標準キットとの違いである。

 ボディカラーは、最初から決まっていた。「バハマオレンジ」 だ。

 この 「バハマオレンジ」 は、1979年10月 の ザ・ニュー レオーネ4WDシリーズ の発売から、1981年6月 のマイナーチェンジまで、一貫して、スイングバック 1.8 4WD のイメージカラーとしてカタログを飾っていた。そして、この色は、当時の ザ・ニュー レオーネ シリーズ全体を見ても、2車種 にしか設定されていなかった。もう 1車種 は スイングバック 1.6 SRX だ。

 SRX は、スバル1000 / ff-1 / 1300G 以来、スバル ボクサースポーツ直系の EA71型ツインキャブエンジン を搭載しながら、ハードトップ4WDRX のように、モータースポーツで華々しい戦歴があるわけでもなく、「適度に」 ジメジメしたマイノリティっぽい 「湿り具合」 が多くの スバリスト を未だに 惹きつけて止まないようである 。

 その SRX の カタログイメージカラー だった アドリアブルーグリークホワイト、そして コンチネンタルシルバー・メタリック の 3色 は、オフィシャルフォトだけでなく、全部実際に見たことがある。

 だが、バハマオレンジ の SRX なんて見たことない。そういう個人的な 「憧憬」 を込めて。スイングバック の 1.8 4WD のバハマオレンジ は、当時結構出てた色で、よく見かけたもんだったけど。

 ちなみに、カラーデータ を紹介しておくと、前回、AMT スバル ブラット で使用した クレオス 108番 「キャラクターレッド」 を下地に、タミヤカラー スプレー TS-56 「ブリリアントオレンジ」を重ねて、クレオス スーパークリヤー UVカット で仕上げている。

 ビッグスケールで面が広いために「ごまかし」 が効かないので、各コートを重ねた後には、いつもより念入りに研ぎ出しを行っている。また、タミヤ の ブリリアントオレンジ も バハマオレンジ のイメージにごく近いカラーだが、これだけだと、私の記憶の中の 「バハマオレンジ」 の 「まったり感」 というか、深みに欠けるように思える。

 今回の 「バハマオレンジ」の仕上がりに、私はとても満足である。

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ラダーフレーム がモールドされ、モーター と トランスファー の上に来る インテリア のスペースを稼ぐために掘り下げられたセンターフロア、逆に、フロント、リヤデフ のスペースを稼ぐために嵩上げされた前後フロアを備えた、このキットならではの特徴的なシャシー。

 もう端から 「リアリティ」 より、モーターライズ による 「特許差動装置」 のメカニズムの作動を誇示するキットであることを 「宣言」 している。

その 「特許差動装置」 とは、一体どのようなものだろうか?

 右の写真の上が フロントデフ、下が リヤデフ だ。「差動装置」 ということだから、この デフ がこのキットの 「キモ」 であることは間違いない。

 説明書では、前後デフのケースの区別はあって、デフケース自体にも、その区別を示す刻印があるが、各部の寸法を測ってみても、形状からも、前後デフは共通部品である。

 そもそも 「ディファレンシャルギア」 とは、左右のドライブシャフト が 「等速」 の場合は、センターの リングギヤ に組み込まれた ピニオンギヤ は動かず、プロペラシャフト から伝わる 駆動トルク をそのまま左右 ドライブシャフト に伝える。

 この場合は、プロペラシャフトの 駆動トルク を、単に、カウンターギヤ で伝えるのと変わらない。

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ところが、クルマ は旋回する場合、内側の車輪より、外側の車輪が早く回ってくれないとスムースに旋回ができない。

 この状況を、上の写真の リヤデフ で説明すると、上が進行方向で、左に旋回するとしよう。すると、左側のドライブシャフト の 回転 が、右側のドライブシャフト の 回転 より 遅くなる。

 すると、左右輪ドライブシャフト の サイドギヤ は、リングギヤに組み込まれた 1組 のピニオンギヤ と噛み合っているので、遅く回って欲しい分、早く回って欲しい分、それぞれ ピニオンギヤ で 減速・増速 される。

 それは、左右サイドギヤ の 「その時 の 回転数」 を足して 2 で割った回転数が、リングギヤ の回転と 「 等しくなるように 」 、つまり 左右サイドギヤ の 回転数 の 「 平均値 」 は、どんなに 左右輪 の 回転差 が大きくかけ離れても、必ず、駆動トルクを伝達する リングギヤ の 回転数 と 同じ になるのだ。

 クルマ を リフトアップ して、この ディファレンシャル・ギヤ で連結された車軸の片方の車輪をを回すと、反対側の車輪が逆転するのを見て、「どうしてこれでクルマは前に進むの?」 と思ったことがある人もいるだろう。

 その単純な 「逆転装置」 に、タイヤ側 からではなく、プロペラシャフト から 駆動トルク を 入力 すると、アクセルの踏み加減より、遅くもなきゃ早くもない 「絶妙のさじ加減で」 左右輪 の 回転差 を調整して、それぞれに必要な分だけ 駆動トルク を分配してくれる、という訳だ。すご 〜 い!

 AMT 1/25 スバル ブラット でも紹介した、故・影山 夙 氏 の著書、「図説・四輪駆動車―322点の図・写真で綴る4WDの技術と発展史」(山海堂 初版 2000年10月発行 )によれば、この リングギヤ と それに内蔵された 1組 の ピニオン・ギヤ と 左右サイドギヤ という単純な構造の部品は、1700年、フランスの時計職人が歯車の逆転装置として考案し、それを 1828年 に フランス で作られた蒸気自動車に組み込んだのが、自動車で実用化された 「世界初」 なのだそうだ。

 そこから 「 300年近くもの間ほとんど変わることなく使われてきたという事実は、まさに驚嘆に値するものである。」(前出:「図説・四輪駆動車―322点の図・写真で綴る4WDの技術と発展史」)

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ただし 「難点」 もある。

 タイヤが路面から離れたり、滑りやすい路面で スリップ を始めると、駆動トルク はスリップした方のタイヤだけに伝えられることになって、クルマ は前に進めなくなり、簡単に 「走行不能」 に陥ってしまうのである。

 その場合、今度は この 「差動装置」 の機能を 「キャンセル」 してやる必要が生じる。

 そこで、この 1組 の ピニオンギヤ の機能を殺してしまう 「デフロック」が、時と場合に応じて、ドライバーが手動で ON/OFF するもの、スリップを検知してメカニカルに自動で行うものが考え出された。

 しかしそれでは、クルマはスムースに旋回できない。当然だ。

 「旋回しながら、きちんと 駆動トルク を路面に伝えてくれなきゃ困る」 という 「わがまま」 に応えるために誕生したのが LSD (リミテッド・スリップ・デファレンシャル) だ。

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このように、「人間の欲望」 には限りがない訳だが(笑)、この ニチモ の レオーネ4WD では、その 「差動装置」 の、最もシンプルな形態を観察することができる。

 「シンプル」 ったって、未だに世界中の FR、4WD が使っているものと理屈と構造はまったく一緒だ。「昔」と違うのは、これを制御する 「周辺」 の機能が複雑になっただけの話だ。

 ただし スバル の 「シンメトリカルAWD」 の場合、フロントデフはトランスミッション内蔵だから、フロントデフ がこのキットのように単独で 「露出」 することはない。

 だから 「シンメトリカルAWD」 ではないってことなんだけどね(笑)。

 しかし、クルマ の メカニズム について、これだけ 「お勉強」 させてもらえるキットは、古今東西 探してみても、非常に稀有な存在であることは間違いない。そういう キット の題材として、レオーネ が選ばれて、こうして世に送り出されたことは、スバリスト として、とても誇らしいことだ。

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モーター 〜 トランスファー の構造。

 よく見て欲しい。モーターから出た 駆動トルク は、平ギヤ を通じて、まず左側の後輪に伝達される。そしてその後輪駆動用の平ギヤに直列に置かれた平ギヤは、後輪用のギヤよりギヤ比が高められていることがお分かりになるだろうか?

 つまり、この ニチモ の レオーネ4WD は、現在の スバル の VTD-AWD と同じく「前後不等トルク配分」 であるということなのだ!

 AB型レオーネ4WD はまだ 前後 50 : 50 のトルク配分だったというのに(笑)!

 トルク配分は、大体 60 : 40 のようだが、もちろん、ここには 前後輪の回転差 を吸収する センターデフ は存在しないから、そこで生じた 回転差 は 「放置」 ということになるし、VTD-AWD のように、65 : 35 から 直結 まで 前後駆動トルク が 可変 になる訳でもない。

 だから、逆に言えば 「VTD-AWD ってスゴくない?」 ということだ。

 スゴいのである。富士重工業 の持つ AWD の「技術の粋」 を結集して開発された、現在でも 「究極のAWDシステム」 なのだから。

 それに現在組み合わされるのが、400N・m という高トルクに耐える CVTトランスミッション 、「リニアトロニック」 、そして 数々の栄光を刻んできた EJ20ターボ の血統を受け継ぐ FA20型直噴ターボエンジン、あるいは FB型新世代ボクサー なのだ。

 そこに、2013年現在、考え得る世界で最も高度な予防安全機能を備えた 「EyeSight」 まで付くというのだから、 「どうしてアンタこれ買わないの?」って話になる。

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もうね、この ニチモ の レオーネ のメカニズムについて解説していたら楽しくて楽しくて 「キリがない」 ので、室内に移ろう。

 ボディ側固定の インストルメントパネル は、モールドもシャープで、ビッグスケールだけに表面のシボまで再現されているから、ちょっと左側の吹き出し口の処理に難点があることを修正すれば、実車と見紛うような仕上がりになる。

 ただ、メーターパネル内の、時計と燃料・水温計の位置が実車とは逆である。

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完成したシャシーである。

 フロントに ダラン とぶら下がっているのは、むぎ球を仕込んだヘッドライトユニットASSYだ。

 長々と駄文を連ねてきた、凝ったドライブトレインのために、室内はこのように 「上げ底」 となっている。また、リヤのラゲッジスペースは、単3電池 3本 を収める 「櫃」 がある。でも、それはまったく許せることだ。

 いつもながら 「さすが ニチモ だね。」 と脱帽するほかない。

 この ニチモ の レオーネ スイングバック 1.8 4WD を作る人が頭を悩ませるのが、このシートセンター部のタータンチェックの生地だろう。

 今回は 「マスキングの鬼」 となって、立縞、横縞をカタログカットからパターンも忠実に再現した。ま、正直、個人的にまだ不満は残るのだが、それが 「どこ」 なのか、ぜひ 「アラ探し」 して頂きたいと思う(笑)。

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フロアコンソールは、残念ながら、デュアルレンジレバー、サイドブレーキレバー と、後ろのボックスの位置関係が、左右逆になっている。

デュアルレンジレバー の 右下 にあった コーションラベル は、只今。実車から画像を起こして製作中です。

 ラゲッジのテニスのラケットとボールという 「取り合わせ」 は、さすがに時代を感じるよねぇ(笑)。

 「タコ焼きプレートがどしてこんなところにあるの?」などという、過去、数知れない スバリスト が 「滑ってきた」 オヤヂギャグ は、間違っても飛ばさんように・・・(笑)。

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お楽しみの斜め上からのカット。

 そう、バハマオレンジって、影になるところが 100% 濃縮果汁還元オレンジジュース のように 「まったり感」 が出て、ハイライトの部分は薄いオレンジに見える 「パラドックス」 が、なぜか私の記憶の中に印象として強く残ってるんだよなぁ。

 ボンネットのキャラクターラインは、私が AB型レオーネ で一番大好きなポイントだ。

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斜め後ろから。

 えらいテニスラケットが目立ちますが(笑)それは置いといて、前後バンパーに付けられたプラスチック製のオーバーライダーは、AB型レオーネ4WD 乗りにとって、ホントに 「優越感」 そのものだった。「チミたちのクルマとは違うのよ。」って感じ(笑)。

 実際、同じ乗用車の 「なり」 をしていても、ひとたび雪が降ったり、赤土が雨でズルズルになった路面に入れば、そんな 「普通の乗用車」 とは、全然 「比べ物にならない」 走破性を発揮する 「全く違うクルマ」 だった訳で、そこが スバリスト としては誇らしかったし、嬉しかった。

 今では、この レオーネ の頃のように、富士重工業 も声高にこういう点を叫んだりはしないけれど、現在でも スバル の AWD は、他のメーカーの 「お茶漬け」 AWDシステム とは、完成度でそもそも次元が違う。

 今も昔も変わらない、「スバリスト の誇り」 である。

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ディティールを見ていこう。

 エンジンフード 右側先端の 「4WD」 のオーナメントは、国内向け レオーネ4WD のみに装備されたもので、プラスチックのベースに、この 「4WD」 ロゴをプリントした アルミ製プレート を貼り付け、さらにその上に 透明シリコン製 のコーティングを施した凝ったものだった。

 経年で、上のシリコンのコーティングが白濁して、縮んできてしまうのが難点だが、個人的には、AB型レオーネ4WD の、大好きなチャームポイントのひとつだ。

フロントフェンダーに付く 「 LEONE 」 のオーナメントも、国内向けのみのもので、輸出仕様では 「 SUBARU 」 の同様のオーナメントに変更される。

 メッキのオーナメントをセミグロスブラックでペイント、「 LEONE 」 の文字を浮き出し処理したものだ。

 下地に ハセガワ の ミラーフィニッシュ を貼付した上に、フラットブラックを乗せて、同様の処理を行っている。

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スイングバック と ハードトップ4WDRXではクォーターパネル、その他の車種ではリヤドア に貼られた 「4WD」 のステッカーも、AB型レオーネ4WD の大切なポイントだ。

 これも経年で、表面の薄いビニールコーティングがひび割れて、パリパリと剥がれてくるので、それを全部剥ごうとすると、下の 「4WD」 のプリントまで剥がれてしまうという 「困ったちゃん」 だが、ホント 「カッコいい」 んだよなぁ 〜。

リヤゲート の 「 SUBARU 」 と 六連星 オーナメント は、どちらもリヤゲートパネルにもプレスが入る、プラスチック製メッキ仕上げの立派なもの。六連星オーナメントのデカールの方は、ベース切り出すのが面倒臭くて割愛しました。申し訳ありません。

 ガラスに貼られた デュアルレンジ と スイングバック のステッカー、バックパネルの 「 1.8 4WD 」 のオーナメントも、この AF5 レオーネ スイングバック 1.8 4WD の絶対外せないポイント。

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そして、リヤのフェンダーアーチ前方から伸びる、AB型レオーネ4WD の最高のチャームポイントである、専用のリヤ大型スプラッシュボード!

 雪の日にスタックしたクルマを助けてあげる時なんか、「どうだあぁ!これでも喰らえええぇぇぇっ!」と、必殺技を繰り出した ヒーロー の気持ちだったもんね(笑)。

 「 4WD 」 の浮き出しに色を乗せる時は、まさに 「一筆入魂」 でした(笑)。

キットの前後バンパーは、実車のそれとほとんど変わらないパーツ構成で素晴らしいのだが、「引け」 がバンパー上面の目立つところにあるので、パテで埋めて修正している。メッキの品質もあまり良いとはいえないので、パテ修正の上で表面を研ぎ出しして、例の ミラーフィニッシュ を貼り付けた。

 フロントグリルの 六連星 も、「入魂」の一作である。ぜひ注目して欲しい。

 今回、久しぶりに ニチモ の レオーネ スイングバック 1.8 4WD を製作してみて、改めて 「やっぱり スバル は スバル だっだ 」というのが感想だ。

 先日、某 セレブ系老舗高級自動車専門誌 の Web版 で、元編集長が「(ガソリンエンジン車のエンジンが掛かった瞬間)わぁ、古くせえ」とか思うそうで、「(プラグインハイブリッド車に、今、乗ることの先に)きっと何か、あると思うよ。」と結んでいた。

 もちろんある。クルマの 「白物家電化」 だ。

Lohner - Porsche

今を遠く遡る 1900年 には、ポルシェ博士が、オーストリアのローナー社で、インホイールモーターの AWDレーサー を作っている。

 当時はまだ鉛電池だっただけに、ドライバーは巨大な電池の上に乗っかって走るものだったが、パッケージとしては、これが来るべき 「EV」 の、そして、スバル が目指しているであろう 「シンメトリカルAWD」 の究極の姿だ。

Lohner - Porsche

いずれ 電気モーター が 内燃機関 に取って代わるとすれば、モーターの回り方で 「批評」 することなんて何もない。スッ と最初から最大トルクで回って、スッ と瞬間的に回転も止まる。定格出力の大小はあっても、パソコンの HDD が、500GB か 1TB か、あるいは、CPU が デュアルコア か クワッドコア か、程度の違いでしかない。

 水平対向 か 直列 か V型 か、あるいは 「回転の上がり方が」 とか 「官能的なエキゾーストノートが」 なんて玄人じみた 嗜好 を語る余地も、ブランドが幅を利かせる余地もまったくない。

 インホイールモーター だから、クルマからエンジンルームはなくなる。トランスミッションも、ブレーキもいらない。考えればいいのは電池の場所と衝突安全に備えたクラッシャブルスペースだけだ。そうなれば、あとは 白物家電 と同じく、価格競争 と 多機能化 しかない。それはまさしく スケールメリット がすべてにモノを言う世界である。

 こういうドラスティックな変革は、インフラストラクチャーの整備まで含めて考えなければ成功しない。例えば EV が普及すれば、消費電力は間違いなく増える。それを賄うための発電はどうするのか?火力発電では 「元の木阿弥」 である。燃料電池にしても、現状ではとても普及のメドなんて立ってはいない。だが、普及させるにしても巨大な資本規模とスケールメリットを持った企業でなければ 「絵にかいた餅」 に過ぎない。こうした方面の議論が収束して、意思統一ができて、最終的にインフラストラクチャーの整備や一般的な普及までには、今後、10年から20年程度の時間が必要だろう。

 こういう 「潮流」 の中で 富士重工業 が トヨタ の資本を受け入れたことは、今後20年程度のスパンで見れば、間違いなく 「吉」 だ。今後、より技術的な連携が深まれば、スバル が 手にできる スケールメリット の 「果実」 は、単独で生き残りの道を模索するより、はるかに大きく実りあるものになると私は考えている。

 「未来」 を語った。だが私が語りたいのは 「今」 なのだ。

 その スケールメリット の 「果実」 を享受しながら、独立した自動車メーカーとして、これからも光り輝いていくために、富士重工業 は、スバル は、いつの時代も 「個性的」 でなければならないのだ。

 持っている技術を磨いて、磨いて、磨き抜いて、磨いていくうちに擦り切れてなくなってしまうものもあるかもしれないが、それがダイヤモンドの原石なら、擦り切れず、やがて美しく人を惹きつけて止まない輝きを放つだろう。

レヴォーグ には 新世代EyeSight が搭載されるという。カラー化で、格段に認識精度が向上し、危機回避能力もこれまで以上に高められる上に、レーンキープアシスト機能まで備わるという。

 1年前、「自動運転」なんて口にする メーカー はいなかった。EyeSight でさえ、YouTube に アラ探し の動画をいちいちアップロードする人間が絶えなかったほどだ。今は違う。どのメーカーも 「自動運転を目指してました。」 というのである(笑)。

IIHS issues first crash avoidance ratings
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スバル は、その始まりから 「革新」 しかなかった。他のメーカーと同じ土俵で相撲を取っていては、生き残ることすらできなかったはずだ。

 スバル360サンバースバル1000レオーネ4WDアルシオーネ・・・ スバル の歴史を飾ってきた、その一台一台に 富士重工業 技術陣 の注ぎ込んだ 「魂」 が、今の スバル たちにどう生きているかを スバリスト はみんな知っている。

 新たに 「生」 を授かる レヴォーグ の誕生を、私はここに レオーネ4WD に新たに 「魂」 を吹き込んで、私の手許にある 12台 の スバル たちとともに、心から祝おう。

 そして、遠く海の向こうで産声を上げる 1台 にも。

 「よく生まれてきてくれたね。ようこそ!」と。

日本模型 1/18 スバル レオーネ スイングバック 1.8 4WD バハマオレンジ(27)

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