ところで、展示用を除いた、試乗用の レヴォーグ は、スラロームコース に 2台、プリクラッシュ ブレーキ体験コース に3台、高速体験試乗コースに 4台 と、全部で 10台ほど が、フル稼働で動いていた。
これを全国キャラバンで 3か月にわたり、つつがなくイベントを運営することと合わせて、動かしていくというのだから、真夏という季節もあって、スタッフの皆さんのご苦労もさぞかし大変なものだろうと感じた。 | |
印象的だったのは、そのような 「大変さ」 を微塵も感じさせないほど、逞しく日焼けしたスタッフの皆さんの表情に笑顔があって、「レヴォーグ の素晴らしさを一人でも多くの人に伝えたい」 という情熱が漲っていたことだ。
本当に大変な季節だが、ぜひ、くれぐれもご自愛の上、無事に、多くの人々が レヴォーグ の素晴らしさに触れ、大成功のうちにすべてのイベントが終了することをお祈りしている。 |
| やがて、高速体験試乗コースの順番が回ってきた。私が試乗したのは、1.6 GT EyeSight のライトニングレッド だった。
ポイントはいくつかあるだろう。まず、新開発 レギュラーガソリン仕様 1.6 DITエンジンが、どれほどのパフォーマンスを備えているのかということ。
ふたつ目に、ビルシュタインダンパーを持たない足回りがどれほどの完成度を持っているのかということ。 |
室内で多くの スバリスト が最も重視するのは、「操作性」 である。
目を移さなければ操作できないほど、複雑に多くの似たようなスイッチが並べ立てられたもの、あるいはきちんと操作できたかどうか分かりずらいもの、ひとつの動作にいくつものアクションが必要なもの、こういう操作系は全部 ノーサンキュー だ。
特に最近のドイツメーカーの 「高級車」 と呼ばれるカテゴリーに属するクルマは、こういう点はすべて 「落第」 だ。
アクティブにドライビングを楽しむ上で、そういう 「作り手側の自己満足」 は、事ある毎に ドライバー の神経を逆撫でする。私は ドライビング を楽しみたいがために スバル を選び続けている。いつでも、どんなときでも、ステアリングはフルロックまで回せなければならないし、フルブレーキングができなければならないし、シート、フットレストは体をしっかりサポートできるものであるべきだ。
天候が変わる。ワイパーを動かす。エアコンを入れる。デフォッガーを入れる。その瞬間に指先に感じるスイッチの表面の触感とスイッチの動作感、そしてそれらの機能がしっかりと意図した通りの動作を速やかに完了して、ドライビングに集中できる環境を整えてくれることが 「ツール」 として 「一級品」 であるということだ。
雪山を登るときに使う ピッケル、ロープ、カラビナ、靴、ウェアに クライマー は 「命」 を託している。時刻を知るために必要な スピードマスター プロフェッショナル も、他に替えることができない大切な 「相棒」 である。そういう 「ツール」 に 「お洒落」 であることなど、私は求めない。余計な虚飾を殺ぎ落として、殺ぎ落として生まれるものには、「機能美」 というものが自然と備わるものだ。
かつての スバル360、スバル 1000 など、まさに 「そのもの」 である。
私は セレブ ではない。室内に本木目や金属パネルを貼ることが 「高級」 だとは思わない。そんなことが 「高級」 だと思っているのなら、勘違いもいいところだ。
現在のクルマのコックピットの大部分を形成するプラスティックと、木、あるいは 金属は、塑性 / 変形率が違う。だから、IIHS(アメリカ高速道路安全保険協会)の スモール オーバーラップ クラッシュ テスト で、事故の際に瞬間的に加わる 3G、4G、あるいはそれ以上の加速度に対して、プラスチック部品から剥がれて飛散する様が見て取れる。
それがエアバッグの上に来たらどうなるか、考えただけでもゾッとする。
スバル の AWD は、世界中の非常に過酷な条件の許でも、プロフェッショナルが信頼するに足るだけの性能と機能を満足している。例えば、摂氏 -50℃ の極寒のロシアで、いまだに右ハンドルの BF型レガシィ ツーリングワゴンGT に乗る人が、シンメトリカルAWD のトラクションとツールとしての機能、乗用車としての快適性に 「スバル 以外のクルマは考えられない」 というのだ。
似たような形の クルマ はないことはない。だが スバル の場合、根底に流れる フィロソフィ と 満足すべき機能面におけるエレメントの数は、そんなクルマたちとは比較にならないほど多く、そして厳しい。
レヴォーグ も例外ではない。「ライバル」 と目されているクルマたちがとても走れない条件下でも、安心して走ることができる。長い時間をかけて磨き抜いた シンメトリカルAWDのシャシーバランスとトラクション、そして 世界一の予防安全システム EyeSight が、乗員の安全のマージンを飛躍的に高める。
スバル のクルマには、いつも 「極限」 がある。だから、他メーカーのように、おちゃらけて キャビンフォワード の ワンモーションフォルム にして、機能を犠牲にすることはあり得ない。機能とは、つまるところ 「安全」 であり、「人の命」だ。
ふと隣に目を移した時に感じるインテリアの視覚的な上質感、センターコンソールに手を降ろした時に触れる、柔らかなフェイシアのステッチも快いと感じるだろう。だが、もし レヴォーグ のコックピットに座る機会があれば、そんな 「ストーリー」 にも想いを馳せて頂きたい。
きっと レヴォーグ が、より頼もしく、そして 富士重工業 の 技術者たちが レヴォーグ に込めた 情熱 と スバル としての機能を満足させるために積み重ねられた、膨大な 検証作業、そしてそこなら生まれる ユーザー への 深い 「愛」 を、感じ取ることができるはずだ。 |