EyeSight Ver.3 の新機能としては、他にも、AT誤発進防止制御 が、従来の前方のみに加えて、後方についてもカバーするようになった他、長い距離をバックするときなどに、ブレーキとスロットルを誤って踏んでしまい、コントロール不能に陥る事故を防止する AT誤後進防止制御 が採用されている。
これは、一定の速度に設定しておけば、バックの時に、いくらスロットルを開けても、その設定速度以上にはスピードが上がらないという「優れもの」で、車庫入れなどの時に、特に体格的に小柄な女性の方などには、アクションに集中できる精神的ゆとりを与えてくれるだろう。 | |
| そして、「ぶつからないクルマ?」 でおなじみ、プリクラッシュ ブレーキ は、会場に 2レーン が用意され、3台 の レヴォーグ が休む間もなく、お客さんを乗せて 時速 40km/h で、ダミーバリア への突進を繰り返していた。
途中、ザッと雨が降って、路面が濡れるような状況でも、シンメトリカルAWD のメカニカルグリップ と、秀逸な ABS、非凡な シャシーバランスの 「合わせ技一本」 といった感じで、毎回 ガッチリ 止まっていた。 |
確かに、こういう 運転支援システム は万能ではない。繰り返しになるが、自動車を運転するという行為の全責任は、すべてドライバーが負うべきものである。
だが、EyeSight Ver.3 では、もはや システムの信頼性でいえば、「もし止まらなかったら?」 という段階は確実に通過している。そこから、さらに高度な制御を取り込み、新たなシステムを構築しながら、より安全なクルマとは? という本質的なテーマを模索する段階に入ったことが良く分かった。 | |
例えば、EyeSight Ver.3 では、この プリクラッシュブレーキが作動した際に、ドライバーのステアリングによる回避行動が行われた場合、VDC によってステアリング操作をサポートする、プリクラッシュステアリング アシスト が採用されている。
すでに世界最大の検索サイト Google が、ステアリングもペダルもない 自動運転車 を公開し、この夏から カリフォルニア で実用試験に入るというニュースが伝えられているし、世界でも大手の自動車メーカーの 自動運転車 もいくつか公開されている。
完全な自動運転が実現するとしても、EyeSight Ver.3 を含め、現在公開されている自動運転車より、全方位の状況をリアルタイムで正確に把握し、高速で分析処理し、より高度な自動車の制御を行う必要があるから、まだまだ遠い未来のことになるだろう。しかし、もうこの時点で、まだ ミリ波 や レーザーレーダー は拾える情報の少なさと動作の不確実性から、もはや 「過去の遺物」 にさえ思える。
私は、自動車 が 有視界 での使用を前提とした乗り物である以上、視界が遮られる状況での 対象物捕捉 が、ちょっとばかり カメラ より優れているからと言って、ピンポイントでしか情報を拾えない ミリ波レーダー やその他のセンサーとの併存、いわゆる 「センサーフュージョン」 に EyeSight 以上の 価値 や 効果 があるとは思わない。
それぞれのセンサーが、ひとつの対象物の情報をそれぞれ感知する場合、そのいずれかに 「優先権」 を与えなければシステムは機能しない。つまり、違うセンサーをパラレルに作動させる際の 「誤作動」 のリスクは払拭できないし、どれかに 「優先権」 を与えるのであれば、そもそもセンサーは 「優先権」 を与えられた一種類だけでいいはずだ。
第一、ボンネットの先さえ見えないような 霧 や 闇 の中を、クルマ で移動しようとは誰も思わない。
予防安全装置 は、メーカー や 評論家 の自己満足 のためにあるのではない。万一の際に 乗員 の安全を担保するために、確実に作動するものでなければならない、
EyeSight Ver.3 は、逆光で人間では手で光を遮らなければ前方が見えない状況でも、雨や雪などの悪条件下でも、ステレオカメラ前方が完全に遮られない限り、しっかりと前方の状況を把握しているという。
前方の捕捉可能距離は 80m から 120m へ伸び、全車速追従機能付きクルーズコントロール作動時の、停止できる前車との速度差は 30km/h から 50km/h へ、プリクラッシュブレーキ における停止可能許容速度は、従来の 55km/h (これでも凄い数字だが) から 75q/h にまで向上しているそうだ。
まあ、間違っても自分の BMG レガシィB4 2.0 GT DIT では試してみようという気にはちょっとならないが(笑)、そうした 運転支援システム としての性能で、現在、EyeSight が 世界一 であることは間違いなく、また、カメラ自体の性能をさらに向上させ、より高度な情報処理のソフトウェアとシステム自体の高速化、より高度な車両制御を組み合わせることにより、より 「高精度な安全」を提供できるシステムへ発展していくだろう。
それは、ドライビングという行為を純粋に心から安心して楽しむために、そして、自動車 というものが持つ、交通事故 という 「社会悪」 の側面を拭うためにある。
私自身、かつて交通事故で愛しい人を失い、人生の階段を踏み外しかけた人間だから。 |